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沸点桜 ボイルドフラワー [日本の作家 か行]


沸点桜(ボイルドフラワー)

沸点桜(ボイルドフラワー)

  • 作者: 真理, 北原
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: 単行本

<帯あらすじ>
私たちは負けない。永遠に。
新宿歌舞伎町でセキュリティをするコウは、生きるためなら手段を選ばないしたたかな女。元情夫のシンプの指示で、風俗店〈天使と薔薇〉から逃亡した淫乱で狡猾な美少女ユコを連れ戻しに成城の豪邸へと向かう。そこには敵対する角筈の殺し屋たちが待っていた。窮地を躱したコウはユコを連れ、幼いころに暮らした海辺の団地に潜伏する。束の間の平穏、団地の住民たちとの交流、闇の世界から抜け出し、別人に生まれ変わった危ない女とやっかいな女の奇妙な共同生活。幼いころから虐待され、悲惨な人生を歩んできた二人に、安息の日々は続くのか――。


2021年9月に読んだ9冊目の本で、単行本で読みました。
第21回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

もう既に文庫化されています。

ボイルドフラワー: 沸点桜 (光文社文庫)

ボイルドフラワー: 沸点桜 (光文社文庫)

  • 作者: 真理, 北原
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 文庫


こうしてみると、文庫化にあたって、漢字とカタカナのタイトルを逆転させて、小幅ながら改題したのですね。

帯に
「抗え。生きろ。それが運命ならば。
 女たちのデュエル」
と書いてありまして、デュエル? と思いました。
対戦とか決闘とかいう意味ですね。
映画「最後の決闘裁判」(感想ページはこちら)の原題が「The Last Duel」でしたね、そういえば。

正直ミステリーとしてそれほど優れているとは思いませんでした。
それどころか、さらに失礼を顧みずいうと、小説としても決してうまくはないな、と。文章も変なところが多いです。
なんですが、最後まで、作者の力に引きずられるようにして読みました。腕力というのでしょうか。

いろんな要素をごちゃごちゃと盛り込みすぎですし、プロットもストーリーもきちんと整理できていないようなとっちらかりぶりです。
いかにもなヤクザな世界に、いかにもなヤクザな登場人物たち。
開巻早々ポンと殺人現場に巻き込まれて、あれよあれよの逃避行。ちょっといびつな形のバディ物としての逃避行です。
あまり好きなタイプの作品ではないし、かなりぎくしゃくしているのですが、なんだかわからない力を感じました。

どんどん作品を積み重ねていけば、こなれていくのでしょうか? あるいは力を失ってしまうのでしょうか?


<蛇足1>
待った。待った。待ちわびた。
だが、案ずるよりも生むが易し。父は来なかった。(7ページ)
ここの「案ずるよりも生むが易し」の使い方が理解できません。どういう意味なんでしょうか?

<蛇足2>
「〈天使と薔薇〉。ゴチック趣味の看板が光っている。」(9ページ)
作者がおいくつのかたか存じ上げませんが、未だ「ゴチック」という人がいるんですね。

<蛇足3>
「さらさらと庭木の葉ががなり、」(15ページ)
「さらさら」と「がなる」というのがどうしても一致しません。
ぼくとは違った言語感覚を持った作者のようです。
「一三〇〇ccの車体に似合わない排気量のエンジンが立ち上がる。」(46ページ)
エンジンが「立ち上がる」という表現もあまり見ませんね。

<蛇足4>
「防波堤沿いに積み上げられたテトラポッドの端から、海面をのぞき込んだときだった」(125ページ)
テトラポッというのは登録商標で一般名称は消波ブロックだと聞いたことがあります。
aikoさんのおかげで、今ではテトラポッの方が流布しているかもしれませんね。

<蛇足5>
 トリガーを引いた。
 第二関節の腹が、固まったトリガーに喰い込んだ。ジャミングだ。こんな馬鹿な。見えていれば、わかることだった。指先で遊底をなぞると、スライドが前に出ていない。思わず笑ってしまった。こんなこすいことは十三年ぶりだ。(211ページ)
ここの「こすい」もまったく意味が分かりません。

<蛇足6>
「神経症のように何度もばらしては、鋼の獲物を組みなおした。」(295ページ)
ここは「獲物」ではなく「得物」でしょうね......

<蛇足7>
「この二十数年、毎日、常同行動のように繰り返した格闘技の鍛錬も、今日で最後だ。」(295ページ)
常同行動がわからず、調べました。
「まるで行動の時刻表があるかのように決まった時刻に同じようなことをすること」のようです。
とすると、常同行動のようにというのは変ですね。常同行動そのものなのですから。

<蛇足8>
タイトルのボイルドフラワー、沸点桜、となっていますが、boiled flower だと茹で上がった花、ですね。沸点というニュアンスはまったくないような。
それに、桜は、フラワーではなく、ブラッサム blossom ですね。



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