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密閉病室 [海外の作家 あ行]


密閉病室 (ハヤカワ文庫NV)

密閉病室 (ハヤカワ文庫NV)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2022/09/05
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
授業料免除を掲げ、優秀な学生を集める全寮制の人気医科大学イングラム。新入生のクイン・クリアリーは、ある日妙なことに気づく。医療は受ける人の社会的価値で差をつけるべきだ、とクラスメイトがみな同じ考えをもち始めたのだ。そして、彼女と同じように疑問を抱いたボーイフレンドが、突然姿を消してしまう。いったい何がこの大学に起きているのか? 理想的なキャンパスに隠された、恐怖の真実。戦慄の医学サスペンス!


2022年1月に読んだ3冊目の本です。
やあ、F・ポール・ウィルスン、懐かしいですね。
ホラーというかサスペンスと言うか、そういう系列の作品をいくつか読んだ記憶があります。
いずれも勢いのある作風で楽しめたはず。

今回はあらすじに医学サスペンスとありますが、同時に大学を舞台にしたサスペンスでもあります。

日本のタイトルは「密閉病室」ですが、原題は「The select」。
選抜、というあたりでしょうか?
特別に選ばれた生徒だけを集める、授業料免除の医大。
入学試験に落っこちたクインが、なんとか補欠入学できるよう頑張って実際に入学の資格を勝ち取るまでに100ページもかかるのですが、その段階で既に大学になにやら怪しげなところがあることが読者に示されます。
そしてそのクインが、大学の謎を暴いていくわけですが、非常に典型的なストーリー展開に思えるものの、それだけにしっかりと物語の土台が読者にも染み渡るようになっています。
原題からの連想もあって、タイ・ドラマの「The Gifted」(感想ページはこちら)を途中連想したりもしましたが、物語の方向性は違うものの、こういう娯楽ストーリーの王道は、やはり楽しめますね。

最後に活劇調になるところも、王道中の王道。
堂々たるサスペンスです。

いまやF・ポール・ウィルスンの本は書店で手に入らないようになっているようですが、<ザ・ナイトワールド・サイクル>シリーズも途中で読んでいないし、絶版になってしまう前に買っておけばよかったな、と後悔。
復刊してくれないですかね?
本書の帯にノンストップ・SF・ハードボイルドとして紹介されている「ホログラム街の女」 (ハヤカワ文庫SF)も気になります。
復刊してくれないかな? 無理でしょうけれど。


<蛇足1>
「クリスマスと大晦日と十六歳の誕生日が同時にやって来たような嬉しさだった」(127ページ)
クリスマスと大晦日はわかりますが、十六歳の誕生日? なぜ十六歳?

<蛇足2>
「というより、マハラージャ宮殿のハリウッド版とでもいおうか、色とりどりの小塔がいくつもあり、アラビア文字に似せた文字で<タージマハール ドナルド・J・トランプ所有>と書かれている。」(288ページ)
まさかF・ポール・ウィルスンも、トランプが後に大統領になるとは思っていなかったでしょうね。


原題:The Select
作者:F. Paul Wilson
刊行:1994年
翻訳:岩瀬孝雄






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