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虹を待つ彼女 [日本の作家 あ行]


虹を待つ彼女

虹を待つ彼女

  • 作者: 逸木 裕
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/09/30
  • メディア: 単行本

<カバー袖あらすじ>
二〇二〇年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。彼女は六年前、自作した “ゾンビ を撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。
晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。やがて彼女に “雨” と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくが――。


読了本落穂ひろいを続けます。
2017年10月に読んでいます。
単行本で読みました。第36回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

プロローグが2014年となっていて水科晴の惹き起こした騒動が描かれるのですが、ここがとても印象的です。
ここをメインに据えて、すなわちエンディングをこの場面にして、長編を作ることも可能なんじゃないかなと素人ながら思えてしまうくらいのシーン。
この鮮烈なイメージを引きずったまま、すっと2020年に時は移り、主人公である工藤の視点となります。

死者を人工知能化するプロジェクトということで、その対象となった水科晴の人となりを探り、作成したゲームの意図を探り、そして謎めいている彼女の恋人を探す。
人工知能やゲームといった新しい衣をまとってはいますが、書かれている内容は伝統的なものです。
個人的に、作中人物の意図を探る、小説・映画といった創作物の意図を探る、というストーリーがあまり好きではないので、この作品に対しても点が辛くなってしまうのですが、それでもラストシーンの鮮やかさは好印象です。
プロローグで見えた景色とエピローグで見える景色。この二つは全く別物であるのに、共通したいわば透明感と言えるようなものを感じたのは、作者の狙い通りなのでしょう。

違うパターンの作品でこの作者の世界を味わってみたいと思いました。

ところで。
前回の「ジェリーフィッシュは凍らない」(創元推理文庫)と版元は違うのですが、この「虹を待つ彼女」にはカバーに英文タイトルが書かれています。
a girl waiting for a rainbow
いろいろ解釈は可能なのだとは思いますが、ここは the girl と定冠詞でなければならないように思いました。

既に文庫化されているので、そちらの書影も掲げておきます。
カバーのイラスト、単行本時と同じイラストをずらして使っているようですね。
非常に印象的できれいなイラストなのでいいことですね。

虹を待つ彼女 (角川文庫)

虹を待つ彼女 (角川文庫)

  • 作者: 逸木 裕
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/05/24
  • メディア: 文庫







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