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シェルター 終末の殺人 [日本の作家 三津田信三]


シェルター 終末の殺人 (講談社文庫)

シェルター 終末の殺人 (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/01/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
目覚めた場所は硬くて冷たい床の上だった──。“私”は自称ミステリ作家の富豪、火照陽之助の屋敷を取材する。目当ては庭の迷路に隠されたシェルターだったのだが……。そこで発生する極限状況下の連続密室殺人事件。地の底で待つ謎と恐怖と驚愕の結末とは何か? “作家三部作”に連なるホラー&ミステリ長編。


読了本落穂ひろいです。
手元の記録によると2018年3月に読んでいます。
三津田信三「シェルター 終末の殺人」 (講談社文庫)

核シェルターの取材に訪れた作家三津田信三。そのとき核爆発が起こったらしく、逃げ込んだ核シェルター内で起こる連続殺人事件。
たまたま居合わせたと思われる登場人物たちで連続殺人が起こる、というあまりにも非日常の世界で、シェルターの持ち主をシェルターの外に締め出してしまったという負い目を負う三津田信三の視点から事件がつづられます。

シェルター外に取り残された主人を除くと、当日来ていた客とシェルターの中の人物の数が合わない、というあたりから、ミステリとしての興味が強く立ち上がってきます。
そして矢継ぎ早に起こる連続殺人。

三津田信三のミステリにつきものといえそうな、ミステリ談議が楽しい。
本作は、密室談義。
また、ホラーとミステリのビデオコレクションを前にディスカッション(?)するところ(133ページあたりから)もとても楽しい

「そして誰もいなくなった」 (クリスティー文庫)を思わせる展開を見せ、ということは通常の謎解きミステリとは違う趣の作品なのかも、と多少は身構えながら読むのですが、真相というのかエンディングというのか、なかなか特殊な地点に連れていってくれます。そう来ましたか!
なので、解説で篠田真由美が「読んで喜ぶ人とそうでない人がいるかも、と思った」と書いているように、読者を選ぶ小説ではあると思いますが、三津田信三の読者であれば問題なく楽しめるのではないでしょうか? だいたい、語り手が三津田信三なんですから。

作中に展開されるホラー、ミステリ談議も、おそらくは結末に対するヒントなのでしょう。
この衝撃のラストの余韻に浸っているうちに、最後に、巻頭言を読み返します。
「何処か別の世界でも
小説を書いているかもしれない
もう一人の三津田信三に本書を捧ぐ──」
これ、とてもよい巻頭言ですね。


<蛇足1>
「私の実家がある奈良の杏羅(あんら)に住む、飛鳥信一郎という親友の妹が、明日香だった。」(25ページ)
あすかあすか、という名前なのか......

<蛇足2>
「その登場人物の描き分けという難題を、無理なく処理する方法が実はないこともない」
「すでにクリスティも、自身の小説でやっているしな。」
「類型的な人物を登場させること」
「えっ……、個性的やのうて?」
「その逆やな。悪く言えば類型的、良く言えば典型的な登場人物を操ることで、物語が構成されているのが、クリスティ作品の特徴じゃないか」(142ページ)
赤川次郎がエッセイ「ぼくのミステリ作法」 (角川文庫)で同じような趣旨のことを述べていたので、おやっと思いました。

<蛇足3>
「調べることができるかぎり、どんな難しい問題でも解けないものはない。
 これはテレンティウスの言葉で、S・S・ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』からの孫引きである。」(449ページ)
非常に印象的なセリフですが、「僧正殺人事件」 (創元推理文庫)は何度も読んでいるというのに覚えていませんでした。
もっといろんな作品に引用されていてもよさそうなセリフですよね。



タグ:三津田信三
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