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真実はベッドの中に [日本の作家 石持浅海]


真実はベッドの中に (双葉文庫)

真実はベッドの中に (双葉文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2022/03/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
江見は和沙との不倫現場を毎回撮影し映像に残す。
そのデータという武器を共有することでお互いの家庭を崩壊させるような裏切りを防げるというのだ。
だが和沙は江見を抱きしめたときある違和感を覚え……。(『相互確証破壊』)
美結は五十嵐という男と奇妙な二人旅をしている。深夜の国道でヒッチハイクをしていたところを彼に拾われたのだ。美結の誘いに乗り、車中で激しく求め合ったのち五十嵐は言った。「君は、人を殺しているね?」(『カントリー・ロード』)他、全6編を収録。
燃え上がる欲望と冴え渡る推理。伏線回収の快感にしびれる官能本格ミステリの傑作!


2023年6月に読んだ冊目の本です。
石持浅海の「真実はベッドの中に」 (双葉文庫)
この本、単行本のときのタイトルが「相互確証破壊」(文藝春秋)
相互確証破壊といったら、冷戦時代の核戦略。大学時代の講義を思い出したりして。
しかし、それが改題されたら「真実はベッドの中に」。いったいどういう中身なの!?
カバー裏のあらすじを見たら、官能ミステリ、だと。
とすると改題後の文庫タイトルの方が内容的にはふさわしいのでしょうね。

「待っている間に」
「相互確証破壊」
「三百メートル先から」
「見下ろす部屋」
「カントリー・ロード」
「男の子みたいに」
の6編収録の短編集です。

官能ミステリというだけあって、いわゆるベッドシーンが盛りだくさんで、そこに謎解きが絡む。
性交シーンにかなり筆が割かれています。

石持浅海の作品は、ある種歪んだ倫理観、論理を持つ奇矯な登場人物が特徴だと思っています。
一方、性交というのは非常に属人的なもので、まさに千差万別、人それぞれと思われるところ、奇矯な論理を展開するにはうってつけとも言えるのでしょうが、人それぞれであるがゆえ趣味の問題なのだと思いますが、正直、官能の部分は楽しめませんでした。
そういうシーンを通して謎解きに至る、というかたちをとっているので、そういうシーンを外してしまうわけにはいかないのですが(この点については解説で村上貴史は「両者を二分のもの」と評しています)、ちょっとしつこいかな、と。

その意味では、意図的なものだとは思うのですが、最初の数編の趣向、構成が同じパターンになっているのも、個人的にはマイナスに働いてしまいました。
まあ、秘められた意図を探る、となると似たようなものになってしまうのかもしれませんが。
後半の2編ではパターンから抜け出しているのでよかったですね。
「カントリー・ロード」ではヒッチハイク後の男女の駆け引き。ミステリとしてはよくある展開かとは思いますが、これまでのパターンを大きく抜け出したので好感度大。
最後の「男の子みたいに」は、いわゆるLGBTの観点からいろいろと議論を呼びそうな結末が用意されています。

それにしても、元表題作である「相互確証破壊」。核戦略からよく官能ミステリに持っていきましたね。石持浅海の発想の柔軟さに感服です。







タグ:石持浅海
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