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あじあ号、吼えろ! [日本の作家 た行]


あじあ号、吼えろ! (徳間文庫)

あじあ号、吼えろ! (徳間文庫)

  • 作者: 辻 真先
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/07/26
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ソ連参戦が噂される満州。国策映画撮影のため、満鉄が誇る超特急あじあ号がハルピンを出発した。得体の知れぬきな臭さを纏う軍人乗客と謎の積み荷。旅程に秘された任務とは? ソ連軍、中国ゲリラの執拗な攻撃が迫る。感動の鉄道冒険巨篇。


2023年6月に読んだ本の感想が終わったので、読了本落穂ひろいです。
2018年1月に読んだ辻真先の「あじあ号、吼えろ!」 (徳間文庫)

「車が主役の冒険小説はあっても鉄道が舞台の冒険小説はないことが、鉄道ファンのぼくは悔しかった。」
巻末に収録されたあとがきに、こう書かれていてあれっと思いました。
でも考えてみると辻真先ご自身による作品を除くと、鉄道を舞台の冒険小説というのは意外にないのかもしれません。

満洲を駆け巡っていた実在のあじあ号を舞台にしていることそのものの興奮度は、世代の関係からか正直ピンと来ない部分はあるのですが(鉄道ファンではありませんし、そういう列車が走っていたのですね、という程度の感想になってしまいます)、それでも当時のことを調べて作品に盛り込むというのは大変だろうなと思いますし、実際に作品として立ち上がってくると、非常にわくわくして読み進むことができました。
「あとがき」と「文庫版 あとがき」を読むと、あじあ号そのものは執筆時点では、一九八〇年夏に蘇家屯機関区でパシナの一台が発見されたきり、という状況で、本書が出版された翌年もう一台大連機関区で、流線型のカバーをつけたまま発見された、とあります。
これ、読む前に知っていたらもっとわくわくしていたかも。

序章のオープニングは帝銀事件!
そして現代になり「私」が新宿駅で人を殺すシーン。
この2つのエピソードについて詳しい説明はないまま、第一部のメインの物語へ移ります。
いよいよ、あじあ号です。

時は第二次世界大戦末期。ソ連が対日本戦参戦しようという折。
ほどなく対日参戦し、満州ではソ連が攻め込んでくると浮足立つ。
特別列車として白羽の矢(?)が立ったのが、あじあ号。
乗り込むは、映画俳優や映画会社の社員、売春婦、そして陸軍と多彩な乗客。
疎開、避難のための列車と思いきや、どうもきな臭い荷物を積んでいるようで......
ソ連軍や中国軍の妨害や攻撃を、あじあ号はどうかいくぐるのか。

ぜいたくな道具立てですね。
実在の人物もちらほら登場し、興趣をどんどん盛り上げてくれます(舞台や時期を考えればすぐわかることではありますが、それが誰かはエチケットとして伏せておくことにします)。
まるで映画を観ているかのよう、というと小説の場合必ずしも褒め言葉と受け取ってもらえないかもしれませんが、ここは褒め言葉です。

大活劇を600ページ近く繰り広げたあと、終章が待っています。
時は現代(戦後四十年の時点)。
往年を振り返る、という趣向ですが、序章と響き合うちょっとしたサプライズが心地よかったです。

こういうのまたどんどん書いて欲しいですね。




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