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転落の街 [海外の作家 マイクル・コナリー]


転落の街(上) (講談社文庫)

転落の街(上) (講談社文庫)転落の街(下) (講談社文庫)
転落の街(下) (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
絞殺体に残った血痕(DROP)。DNA再調査で浮上した(コールド・ヒット)容疑者は当時8歳の少年だった。ロス市警未解決事件班のボッシュは有名ホテルでの要人転落(DROP)事件と並行して捜査を進めていくが、事態は思った以上にタフな展開を見せる。2つの難事件の深まる謎と闇! 許されざる者をとことん追い詰めていく緊迫のミステリー!<上巻>
ホテルから転落した市議の息子は殺害されたのか自殺だったのか。背後にはロス市警の抱える積年の闇が潜んでいた。一方、絞殺事件は未曾有の連続殺人事件へと発展する。冷厳冷徹に正義を貫き捜査を進めるボッシュ。仲間や愛娘に垣間見せる優しい姿と、陰惨な事件との対比が胸に迫る不朽のハードボイルド小説!<下巻>


2023年6月に読んだ7&8冊目の本です。
マイクル・コナリー「転落の街」(上) (下) (講談社文庫)
前作「ナイン・ドラゴンズ」(上) (下) (講談社文庫)(感想ページはこちら)に続き、作者マイクル・コナリーの看板シリーズであるハリー・ボッシュものです。

未解決事件班にいるボッシュに、ホテルから転落した市議アーヴィン・アービングの息子ジョージの死の真相を探れという本部長からの指示。市議の御指名だという。
アーヴィン・アービングは元ロス市警副本部長ながら警察とは敵対的なポジションをとっており、ボッシュとは過去に遺恨があるというのに......
ハイ・ジンゴ。
「警察と政治の合わさったもののこと」(34ページ)と説明され、「くだらん政治案件」を指すようですが、この語が繰り返し作中に出てきます。

もちろんこの市議の息子の件にかかりきりになれ、という指示のはずですが、とりかかろうとしていた未解決事件の捜査も続けようとするところがボッシュらしい。
事件そのものは複雑ではないのですが、その分決め手に欠けやすいもので、そこに政治的色彩が絡み=いろんな人たちの思惑が絡み、なかなか一筋縄ではいきません。
市議とのやりとりも緊迫しますし、本部長室付きのキッズ・ライダー(ボッシュの元相棒)とのやりとりもピリピリした雰囲気となります。

一方の未解決事件の方は、早々にボッシュが見当をつけてしまうのですが、その途上で、ボッシュは社会復帰訓練施設勤務の医師ハンナと知り合い(というかめぐり逢い、と言った方がよいかも)、仲を深めていきます。

このハンナとのやりとりもそうですが、相棒であるチューとの関係性に変化が訪れたり、ボッシュが衰えを感じ引退のことを考えたり、ボッシュの娘マディが15歳になっていて銃の腕前がボッシュ以上のものになっていたり、シリーズとしての読みどころが、2つの事件の進展とともに描かれていきます。

読み終えてみると、政治的事件の方は関係者の動きのわりに事件が小さい印象ですし、未解決事件の決着がどうにも収まりが悪い印象なのですが、意図的にそうしていると思われます。

いつものことながら、マイクル・コナリーのページターナーぶりを発揮した作品でした。
おもしろい。


<蛇足>
 ハンナは笑みを浮かべた。
「ハードボイルドの刑事が言うようなセリフっぽくないな」」
ボッシュは肩をすくめた。
「おれはハードボイルドの刑事じゃないかもしれない。」(下巻17ページ)
マイクル・コナリーは、メタ的手法をとる作家ではないと思いますので、この「ハードボイルドの刑事」うんぬんというやりとりは素直によむべきところなのでしょう。
ハードボイルドが一般的な誤として日常会話に登場するのですね。


原題:The Drop
作者:Michael Connelly
刊行:2011年
訳者:古沢嘉通


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