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犬はまだ吠えている [海外の作家 パトリック・クェンティン]


犬はまだ吠えている (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

犬はまだ吠えている (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2015/04/28
  • メディア: 単行本

<カバー袖あらすじ>
その日のキツネ狩りの「獲物」は頭部のない若い女の死体だった。悲劇は連鎖する。狩猟用の愛馬が殺され、「何か」を知ってしまったらしい女性も命を奪われてしまう
陰惨な事件の解決のために乗りだしたドクター・ウェストレイク。小さな町の複雑な男女関係と資産問題が真相を遠ざけてしまうのだが……。


2023年6月に読んだ6冊目の本です。
単行本です。パトリック・クェンティン「犬はまだ吠えている」 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)
日本ではパトリック・クェンティンとして紹介されていますが、森英俊の解説によるとこの作品は
ジョナサン・スタッグ名義で発表されたものらしいです。
本書はカバーでは、Patrick Quentin と書かれている一方、巻頭の原題など著作権表示のところは、Jonathan Stagge になっています。

ドクター・ウェストレイクを探偵役に据えたシリーズの第1作ということらしいです。
アメリカでキツネ狩り、というだけで時代を感じてしまったのですが、今でもやっているのでしょうか?
ほかにも時代を感じさせる要素があちらこちらにあり、古き良き探偵小説というイメージを保ってくれています。
扱われている事件はかなり猟奇的というか、首切りですから残忍な感じなのですが、この古典的なイメージのおかげで、あまりどぎつく感じません。

田舎町(と呼んでいいのだと思います)を舞台に、狭い世界の登場人物たちの間で事件を起こす王道の本格ミステリで、連続して第二の殺人や馬殺しが起こる手堅い展開になっています。
最後に物語全体の絵が浮かび上がってくるところでは、勢いよく読んでしまったのでなにげなく読み過ごしてしまったことが手がかりあるいはヒントとして機能していることに満足しました。
犯人当てそのものだけだと難しくはないと思いますが、動機を含めた細かい部分の要素が組み立てられていくところはとても楽しく読めると思います。

このシリーズ、解説によると9作目まであるようなので、残り8作も訳してくれるとうれしいな、と思います。


<蛇足>
「しかし、トミー・トラヴァースの場合、不倫をするとは信じられなかった。アメリカ人の夫なら、似たような立場になれば女漁りを始めるかもしれない。だが、トミーはきわめてイギリス人らしかった。そして──冷血とも、禁欲的とも、そのほか何と呼んでもいいが──イギリス人の夫は結婚の誓いを真面目に受け取る傾向があるのだ。」(174ぺージ)
英米の作品を読んでいると、英米の比較がされることがちょくちょくありますが、ここもその一例かと思います。
当然人によるのだと思いますが、一般的にはこういう観方をされている(あるいは、されていた)ということなのでしょう。
ところで、 ここの「冷血」という語はなんとなくおさまりが悪いですね。原語を確認していませんが、訳しづらい語なのだと思います。




原題:The Dogs Do Bark
著者:Jonathan Stagge
刊行:1936年 
訳者:白須清美




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