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家庭用事件 [日本の作家 似鳥鶏]


家庭用事件 (創元推理文庫)

家庭用事件 (創元推理文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
理由(わけ)あって冬に出る』の幽霊騒ぎ直前、高校一年の一月に、映研とパソ研の間で起こった柳瀬さんの取り合いを描く「不正指令電磁的なんとか」。葉山君の妹・亜理紗の友人が遭遇した不可解なひったくり事件から、これまで語られてこなかった葉山家の秘密が垣間見られる「優しくないし健気でもない」など五編収録。苦労性で心配性の葉山君は、今日も波瀾万丈な高校生活を送る!


読了本落穂ひろいです。
2017年8月に読んでいます。
似鳥鶏「家庭用事件」 (創元推理文庫)

「理由(わけ)あって冬に出る」 (創元推理文庫)
「さよならの次にくる <卒業式編>」 (創元推理文庫)
「さよならの次にくる <新学期編>」 (創元推理文庫)
「まもなく電車が出現します」 (創元推理文庫)
「いわゆる天使の文化祭」 (創元推理文庫)
「昨日まで不思議の校舎」 (創元推理文庫)
に続く第6弾。

「不正指令電磁的なんとか」
「的を外れる矢のごとく」
「家庭用事件」
「お届け先には不思議を添えて」
「優しくないし健気でもない」
の5編収録の短編集。


「不正指令電磁的なんとか」のトリックにはびっくりしました。
コンピューターを使ったものなのですが、実は昔会社のコンピューターで似たようなことをやった経験があるからです......(いえ、決して悪いことをしたわけではありません。単に遊んだだけです。あっ、会社で遊んだら、それ自体が悪いことか...)

「的を外れる矢のごとく」は冒頭の弓道の練習風景が、葉山君が言う通りシュールで笑えます。
市立高校の弓道場ならではの事件が素晴らしい。謎が常識的に考えれば解けるようになっている点と、それでいてミスディレクションが効いていて一種の盲点になっているのがポイントだと思いました。

「家庭用事件」は、葉山家で起きた事件で、電流的には問題がないのにブレーカーが落ちた、ということと葉山家の間取りから、するすると(意外な)真相を導き出す伊神先輩、というお話。

「お届け先には不思議を添えて」は映研が保存していた昔の文化祭のVHSテープがダメになってしまった、という事件ですが、発想がおもしろいです。
これ、ひょっとして小峰元「アルキメデスは手を汚さない」 (講談社文庫)へのオマージュ、ではないですよね(笑)。←ネタバレになりかねないので字の色を変えておきます。

「優しくないし健気でもない」は、葉山君の妹の友人の姉が巻き込まれたひったくり事件。
ある意味ミステリ的には大ネタを繰り出してきています。油断していたので驚きました。
この種の大ネタは伏線が成否のカギを握っているもので、第二話の「的を外れる矢のごとく」あたりから周到に伏線が忍ばされていたことがわかります。
この作品の本質は、おそらく事件の謎解きが終わって、犯人を突き止めた後の、葉山君と妹の会話にあるのでしょう。作者の主張が割とストレートに打ち出されていて、ミステリ的な大ネタと共鳴するかたちです。


創元推理文庫には、日本人作家の作品でも扉のところに英題がつけられています。
似鳥鶏の作品の英題はそれぞれ凝っているのですが、今回のものは読了後に見たほうがよいかもしれません。
ここも字の色を変えておきたいと思います。「ALICE IN HEARING LAND


<蛇足1>
「コンピューターって好きじゃないんだよね。論理で動くくせに非論理的に壊れるから」(45ページ)
伊神先輩のセリフです。うまい!

<蛇足2>
いま手元にある文庫本の、227ページ最終行から233ページ6行目まで(最終話「優しくないし健気でもない」の第4章にあたる部分)のフォントがほかの部分と違うのですが、意図がわかりませんでした。



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