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花嫁純愛録 [日本の作家 赤川次郎]


花嫁純愛録 (ジョイ・ノベルス)

花嫁純愛録 (ジョイ・ノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2023/03/24
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
刑事と容疑者が、同じ日、場所で挙式。
二人の花嫁の運命は?
刑事の小堀有里は結婚式当日を迎えていた。そこに部下から女子大生殺人事件の容疑者が見つかったと報告。驚くことに容疑者も結婚式当日、式場も同じだと言うのだ。有里は、式直前だというのに捕まえようと控室を飛び出す。容疑者の新婦・みちると友人の塚川亜由美はいたが、肝心の容疑者は逃してしまう。後日、みちるに「夫を助けたければ、小堀有里を殺せ」と謎の人物から脅迫電話があり——。
表題作のほか「花嫁の夏が終る」を収録。シリーズ第36弾。


2023年7月に読んだ最初の本です。
花嫁シリーズ36作目。赤川次郎「花嫁純愛録」 (ジョイ・ノベルス)
表題作と「花嫁の夏が終る」の2話収録。

表題作「花嫁純愛録」は、物語の筋書きも登場人物の設定も、無茶苦茶です。
戯画化というにしてもちょっと度が過ぎているかな、と感じてしまいました。
自分の結婚式を投げ出し、逮捕状もないのに(大学教授を大学で見かけた、という目撃証人がいるだけという状態)相手の結婚式に乗り込んでぶち壊して拘束しようとする女性刑事の存在がまず理解できませんし、その後の女性刑事とその結婚相手の母親の言動も理解を超えています。
犯人サイドの意図や行動も到底納得できるものではありませんし、さらに驚くことに、肝心かなめのある登場人物の行動も謎です。
「浮世離れ」(116ページ)という語で片付けられるようなレベルではないと感じてしまいます。
赤川次郎には、人間ではないもの、人知を超えた存在が登場する作品も数多くあり、そういう作品であれば現実的な物語ではないのですから、変わった人物や設定があってもこの世界ではこういうこともあり得るのかな、とまだしも受け入れられるのですが、この花嫁シリーズはそういう位置づけではないので、もう少し現実に寄り添った形にしてもらえるとありがたいです。
花嫁シリーズらしく、ちゃんとした花嫁が登場したのはよかったのですが。

「──こんなお金持の助手を持った名探偵っていないわよね、と亜由美は思った。」(122ページ)
というセリフが最後に亜由美の口から飛び出して笑ってしまいました。
探偵自身が金持ちというのは、筒井康隆「富豪刑事」 (新潮文庫)がすぐに思い浮かびますね。
助手が金持ちというのはなかったでしょうか?
赤川次郎自身の悪魔シリーズはどうかな? 香子は助手ではなく探偵でしょうか?


「花嫁の夏が終る」は「花嫁純愛録」に比べると幾分現実的ですが、こちらの登場人物たちも強烈です。
ただこちらの場合は「組織」が出てきます。赤川次郎の作品にはよく出てきますね。
実際には暴力団やマフィア等実在しますので現実にもあり得るものではあるのですが、こういう「組織」は、日常の存在とは認識しづらく、「組織」が出てくると現実離れした内容も受け入れられやすくなる気がします。

もっとも赤川次郎の作品では、こういったことは気にせず、ただただ作品世界の中で楽しむべきなのかもしれませんね。



<蛇足1>
「とても気性の激しい人で。イギリス人には珍しいタイプです。」(61ページ)
まあ登場人物の考えに過ぎないのですが、イギリス人は気性が激しくないとは限らないでしょうに......

<蛇足2>
「難民の支援のような活動に、日本の企業は消極的だ。景気のいいときには、
『文化芸術活動を支援する』
 などと言うのだが、一旦会社の経営が傾くと、
『うちは慈善事業をやっているんじゃない』
 などと言い出して、真先にその手の支援を打ち切ってしまう。
 支援は『続けること』にこそ意味があるのに。」(85ページ)
言いたいことはわからないでもないですが、「難民の支援」と「文化芸術活動の支援」は同列に論じられないと思いますし、経営が傾いた時にまで支援の継続を求めるのは無理があるでしょう。
流行に乗っかるだけの意識で支援をすることには疑問を持ちはしますが。

<蛇足3>
「殿永さんは、三崎を追っていたんですか?」
「三崎は詐欺師でしたが、その被害にあって、自ら命を絶った人も何人かいたんですよ。これはもうお間接的な殺人としか言えませんからね」(159ページ)
詐欺の被害を考えると、間接的な殺人というのは一般論としてはその通りだと思いますが、これは刑事による発言となると問題だな、と思います。
そういえば、殿永刑事は何課に所属しているのでしょう??




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