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64(ロクヨン) [日本の作家 や行]


64(ロクヨン) 上 (文春文庫)64(ロクヨン) 下 (文春文庫)

64(ロクヨン) 上 (文春文庫)
64(ロクヨン) 下 (文春文庫)

  • 作者: 横山 秀夫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/02/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。記者クラブと匿名問題で揉める中、〈昭和64年〉に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件への警察庁長官視察が決定する。だが被害者遺族からは拒絶され、刑事部からは猛反発をくらう。組織と個人の相克を息詰まる緊張感で描き、ミステリ界を席巻した著者の渾身作。<上巻>
記者クラブとの軋轢、ロクヨンをめぐる刑事部と警務部の全面戦争。その狭間でD県警が抱える爆弾を突き止めた三上は、長官視察の本当の目的を知り、己の真を問われる。そして視察前日、最大の危機に瀕したD県警をさらに揺るがす事件が──。驚愕、怒涛の展開、感涙の結末。ミステリベスト二冠、一気読み必至の究極の警察小説。<下巻>


2023年11月に読んだ最初の本です。
横山秀夫の「64(ロクヨン) 」(上) (下) (文春文庫)
ミステリが好きとか言いながら、未だ読んでいなかったのかよ、と言われそう。
「このミステリーがすごい! 2013年版」 第1位
週刊文春ミステリーベスト10 第1位
もう10年前の作品なのですね。

未解決事件としてD県警にのしかかる、十四年前、昭和64年に発生した少女誘拐殺人事件、64(ロクヨン)。
D県警内部の、刑事部と警務部の対立。ひいては、県警と中央との対立でもあります。
主人公は、刑事部出身(?) ながら警務部広報室の広報官三上。刑事に戻りたいと考えている。

オープニングは、三上が死体の身元確認に向かうシーン。失踪中の娘あゆみではないか、と。
別人でほっとし、広報の仕事に戻った三上を待ち受けているのは、交通事故の加害者の身元を匿名とした県警に対し抗議する記者たち。記者クラブとの仲がどんどん険悪になっていく。
うまくいかず悩む三上に赤間警務部長が命じたのは、警察庁長官の視察の下準備。D県警の抱える未解決事件であるロクヨンの被害者宅への往訪承諾の取り付けとその後の記者会見の段取り。
ところがロクヨンの被害者の父である雨宮は長官の訪問を拒絶する。
雨宮の拒絶の理由を探ろうとした三上は、同期で警務課の二渡がロクヨンをめぐって怪しい動きをしていることを掴む。
ここまででざっと100ページほど。
物語の重要な要素はすべて出尽くしているのですが、主人公の置かれている境遇と県警内部の組織の話がしばらく大半を占めるので、話の展開はミステリとしては遅めといってもよいでしょう。
それでも、部外者にはよくわからない警察内部の事情がしっかり説明されるので退屈したりは決してしません。

常に組織の論理に縛られ、組織対組織の考えが染みついていて、常に相手の思惑、動向に憶測に憶測を重ねる。
読んでいて、おいおい、と思うところも多々あるのだけれど、組織の中にいるというのはこういうことなのかも、とも思う。

タイトルがロクヨンで、それが長い間の未解決事件、ということで、それを広報部にいながら主人公が解決に導くという話なのか、と思いきや、そういう流れにはならず、ロクヨンはほぼ置いてけぼりで、主人公の娘の失踪と、県警内部の話──これ、当然なんですよね。主人公から見た重要度からして。
それでもロクヨンはD県警最大の未解決事件として、全体に大きな大きな影響を及ぼします。

下巻にはいって緊迫度も増し、組織対組織の争いがクライマックスへ向かう中、主人公をとりまく諸問題が一気に動き出す。
出てくる事象、問題それぞれ別であっても、要素要素で関係している流れになっているプロットがすごい。
謎解きとしてみた場合弱いところもあるのですが(この作品を謎解きものとして読んでいる人はいないとは思いますが)、そもそも作者は謎解きものを書くつもりもないでしょうし(横山秀夫は上質の謎解きが書ける作家という認識のうえです)、加えて、その部分も全体のプロットに奉仕する形になっていて、あえてそうしてるんだなとわかるようになっています。

以下極私的な感想ですが、組織対組織の物語って、どちらかの組織に肩入れした構造の物語でないと決着が難しいと思っているところ、この作品では主人公をどちらの組織にも足を突っ込んでいるという設定なのがポイントです。

登場人物それぞれの動きにもきちんと意味合いがあり、物語の中でここだという位置に配置されています。
扱われている事件・事態のなかには最後まではっきりしないもののあるのですが、それでも物語全体としてはすべて収まるところに収まり(居心地がよいかどうかにかかわらず)、物語として決着がつくのが壮観。

横山秀夫は面白い、すごいと言ったところで今さら感ありますが、あらためて認識しました。




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