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一万両の長屋 [日本の作家 は行]


一万両の長屋ー大富豪同心 (3) (双葉文庫)

一万両の長屋ー大富豪同心 (3) (双葉文庫)

  • 作者: 幡 大介
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2010/08/11
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
五年前、一万両にものぼる大金を盗み、大坂に逃げた大盗賊の夜霧ノ治郎兵衛の一党が江戸に舞い戻った。南町奉行所あげて探索に奔走するが、見習い同心の八巻卯之吉だけは、吉原で放蕩三昧。そんなとき、卯之吉は貧乏長屋の大家殺しの探索を筆頭同心から命じられる。大好評シリーズ第三弾。書き下ろし長編時代小説。


2023年11月に読んだ6冊目の本です。
幡大介「一万両の長屋ー大富豪同心 (3) 」(双葉文庫)
シリーズ第3弾です。

主人公は、豪商三国屋の若旦那にして、見習い同心の卯之吉。
どう考えても同心として活躍できそうもないキャラクターなのに、そして本人はたいしたことをしないのに、周りが勝手に動いたり、勝手に勘違いしたりして、剣豪で腕利きだと思われてしまう、という設定のシリーズです。
どう考えてもだめだめなのに、周りが勘違いしてくれてなぜか大物感漂う、というおかしさが炸裂。

「うっかりとちょっかいをかけた黒雲の伝蔵一家は、八巻の逆鱗に触れて壊滅させられた。博徒の一家をたった一人で叩き潰したのである。想像を絶する剛腕だ。比肩しうるのは洛外下り松の宮本武蔵か。鍵やノ辻の荒木又右衛門か。高田馬場の堀部安兵衛か。」(127ページ)

なんてなかなか言われることではないですよね。
今回は、さらに、卯之吉の祖父徳右衛門(卯之吉を無理から同心にした張本人)まで加勢しますから、みなの勘違いにも拍車がかかります。

事件の方は、盗賊が盗んだ一万両を貧乏長屋に埋めて隠しているのをめぐる大騒動。
大坂からわざわざやってきた盗賊の頭をはじめ一味が、卯之吉のせいで──いや、卯之吉のせいではないと言うべきなのでしょうね。勝手に──きりきり舞いするさまがとてもおかしい。
ミステリとしての興味で読めるものではありませんが、事の次第が愉快ですし、最後の決着のつけ方も、卯之吉らしいというか、わりと洒落た着地になっているように思いました。
ミステリではないし、3冊読んだところでシリーズを読むのをやめようかとも思っていたのですが、楽しいので、やはり読み進んでいってみようと思いました。


<蛇足1>
「五年ぶりに江戸に下って参りましたんや。」(71ページ)
大坂から江戸に来た治郎兵衛のセリフです。
京都からならともかく、大坂からも江戸は ”下る” だったのだろうか? と思いましたが、あちらは上方、ですから、これでよいのですね。

<蛇足2>
「この屋敷にいる男たちは念友(同性愛者)ではない。艶冶な息づかいが感じられない。
 見た目が強面でも、実は念者という者はいる。そういう男たちはいざその場に臨むと、外見とは似ても似つかぬ艶かしい息づかいをするものだ。」(166ぺージ)
江戸時代には、念友とか念者と言ったのですね。知りませんでした。



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