SSブログ

チャイルド44 [海外の作家 さ行]


チャイルド44 上巻 (新潮文庫)チャイルド44 下巻 (新潮文庫)チャイルド44 下巻 (新潮文庫)
  • 作者: トム・ロブ スミス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 文庫


<背表紙あらすじ>
スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた……。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。 <上巻>
少年少女が際限なく殺されてゆく。どの遺体にも共通の“しるし”を残して――。知的障害者、窃盗犯、レイプ犯と、国家から不要と断じられた者たちがそれぞれの容疑者として捕縛され、いとも簡単に処刑される。国家の威信とは? 組織の規律とは? 個人の尊厳とは? そして家族の絆とは? 葛藤を封じ込め、愛する者たちのすべてを危険にさらしながら、レオは真犯人に肉迫してゆく。<下巻>

「このミステリーがすごい! 2009年版」第1位、週刊文春ミステリーベスト10第2位で、2008年CWA賞(イアン・フレミング・スチール・ダガー賞 [The Ian Fleming Steel Dagger for best thriller] )を受賞しています。
「子供たちは森に消えた」 (ハヤカワ文庫NF)が扱っている事件を題材にしたミステリ。
社会の不行跡である犯罪は貧困と欠乏がなくなれば消滅する。新しい社会は今も発展しており、まだ完成はしていないが、この社会には犯罪は存在しない。--このテーゼに基づいて、存在を否定される児童連続殺人。
主人公レオも最初は体制側で、被害者の一人の父親である部下のヒョードルに対して、殺人などではない、事故だったのだ、と説得する側です。主人公レオが体制側から滑り落ち特権を奪われ、真実に目覚め(?)、体制と闘いながら、連続殺人犯を捕まえる、というのが骨子です
したがって、物語のトーンは非常に暗いものとなります。扱われている事件が児童連続殺人ですから、なお一層。圧政下の暮らし、ということで想像する嫌な生活を裏付けるようなエピソードも次々に出てきます。恐怖政治、密告社会.... 作者は最後のエピソードに一筋の光明を投げかけたのでしょうが、光が弱い... 全体を通して、救いがなく、重苦しい。肌に合わない人、多いのではないかと思います。
ミステリ的な趣向という観点で見ると、シリアル・キラーの正体・動機にはもうひとひねりほしいところですが(想像のついた読者は結構いると思いますので)、個が全体に奉仕するという建てつけの社会に対し、あくまで個、あまりにも個に起因したシリアル・キラーを対置したところに作者の狙いがあるのでしょう。そこを楽しめるかどうかが評価の分かれ目になりそうな気がします。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0