SSブログ

眼鏡屋は消えた [日本の作家 や行]


眼鏡屋は消えた

眼鏡屋は消えた

  • 作者: 山田 彩人
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/10/08
  • メディア: 単行本


<表紙袖あらすじ>
気がつくとあたしは演劇部の部室の床でのびていた。
そのうえ八年間の記憶が失われ、現在あたしは母校で教師になっているらしい。
しかも親友の実綺が高二の文化祭直前に亡くなっていたなんて!!!
八年前と同様に学園内では、彼女の書いた脚本『眼鏡屋は消えた』の上演を巡るごたごたが起きている。
実綺の死には何か裏がありそうだ。
上演を実現し、自分の記憶を取り戻すため、元同級生の探偵に事の真相を探ることを頼んだ。
あたしが最も苦手とする、イケメン戸川涼介に――。
青春時代の切ない事件と謎を、リーダビリティ抜群の筆致で描くミステリ。

単行本です。
第21回鮎川哲也賞受賞作。
ヒロイン1人称の語り口が最大の長所です。高校生が語り手(本当は8年後だけど、作中の作者の意識としては高校生だから、高校生の書いた文章という前提になると思われます)にしてはちょっと滑らかすぎますが....おもしろい。新鮮な印象を受けました。
問題点は、真相がちっとも意外ではないことでしょうか。記憶喪失ものとして、きわめてありふれた着地をみせますから。しかし、巻頭にある作者の受賞の言葉では、
「一口に本格ミステリといっても様々なタイプがありますが、いま魅力を感じているのは推理にもとづく捜査によって謎を解いていく様子を丁寧に描き、しかし解けそうだと思うだびに謎は別の側面を見せて立ちはだかり、解決は逃げ水のように遠ざかっていく……過程を描いた作品です」
ということですから、意外性は狙っていない、ということかもしれません。
確かに、細かな謎の組み合わせは心地よく読めましたし、驚くようなトリックはないかわり現実的で納得感のある解決が提示されます。
ただ、真相を知ってから振り返ると、どうして8年後に蒸し返されるのか、という部分がちょっと配慮不足のような気がしてなりません。こういうタイプの作品の一番大事なキーとなるポイントだと思うので、残念です。特にこの作品の場合は、作品のテーマがここと響きあって読者に訴えかけるという構図を取っているので、余計気になります。構成力はあると思えるだけにもったいない。
でも、まあ、これはデビュー作。十分おもしろく読めましたし、この作者は、8年前と現在という2つの時点の事件を組み合わせてプロットを紡ぐ力と、軽妙な語り口という大きな武器を持っていると思われますので、次作に大いに期待します。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0