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angels 天使たちの長い夜 [日本の作家 篠田真由美]


angels 天使たちの長い夜 (講談社文庫)

angels 天使たちの長い夜 (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/12
  • メディア: 文庫


<背表紙あらすじ>
夏休み、人けのない校庭に男の死体が転がっていた。校内には十五人の生徒だけ。警察へは通報せずに、生徒たちによる犯人捜しが始まる。微妙に絡み合う人間関係と錯綜するアリバイから浮かび上がる意外な犯人は? 蒼こと薬師寺香澄が活躍する「建築探偵シリーズ」の番外編。ミステリーの醍醐味、ここにあり!

建築探偵シリーズの番外編です。
食中毒事件で大人が排除された状態となった夜の学園で、犯人捜しを行うという、建築探偵シリーズの中でもミステリ味の濃い作品といえるのではないでしょうか?
閉ざされてはいるけれど、それなりに広い空間を舞台にしたことで、時間軸を中心にした謎解きが展開されます。
作品そのものは、現実の事件を題材にした作中作をプロローグとエピローグで挟み込むという構成をとっています。こういう構成の場合、絵でいえば額縁にあたる部分(この作品ではプロローグとエピローグ)の狙いが作品の評価を大きく左右するわけですが、この作品は納得できるかたちだと思います。
解説(葉山響)で「建築探偵シリーズの主要登場人物である蒼--薬師寺香澄が、本書では特権的な重要性を与えられず、単に十五人の高校生のひとりとして描かれている」とされ、確かに主役のような表立った動きはしません。「おそらく作者は、特殊な過去とは離れた環境で、単なる高校生として生活する蒼を、主役級という特権的な位置から外した上で、一度は客観的に描写しておくべきだと考えたのではないか」と指摘されており、なるほどなぁ、と思いました。そういう狙いは達成されていると思います。シリーズ外の人物、同世代の人物から見た蒼像が立ちあがっていますから。
net上では、蒼が主人公でなく大して活躍もしないので不満だという趣旨のコメントが散見されますが、表面的にはそうでも、やはりこの作品のメインは蒼だと思います。一見脇役風に見えようとも、特権を剥奪しようと、まぎれもなく、≪蒼の物語≫になっています。蒼の過去を知るものが読めば広がりも感じられます。建築探偵シリーズの番外編として組み立てた作者の腕は確かだ、と読んだのですが、うがちすぎではないと確信しています。


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