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真夜中の神話 [日本の作家 さ行]


真夜中の神話 (文春文庫)

真夜中の神話 (文春文庫)

  • 作者: 真保 裕一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
薬学の研究に没頭した挙げ句、夫と娘を失った栂原晃子は、新たなテーマを求めてインドネシアに向かうが、飛行機墜落事故に巻き込まれる。だが奇跡的に助かった晃子は、山奥の村で神秘的な歌声を持つ少女と出会い、驚異的に快復した。一方、町では猟奇的な殺人事件が発生していた――。伝説と神話に彩られたスペクタクル巨編。

この小説、ジャンルはなんと呼べばいいんだろ? 真保裕一の作品の中ではかなりの異色作です。
歌声で怪我や病を治癒する少女、という大きなフィクション(ですよね!?)がベースになっていて、その秘密と少女を守ろうとする村人、暴こうとする人たち、という構図ですので、広い意味で冒険小説になるのでしょうか?
あらすじには、「伝説と神話に彩られた」とありますが、常識の範囲では説明できない現象(ここでは治癒)を引き起こす者がいれば、当然、伝説が生まれる余地は大きいわけで、少女の歌にはコウモリすら影響を受けるということから、吸血鬼伝説という流れになります。また、奇跡を起こす者、ということで、宗教の問題も出てきます。
一方で、主人公の職業柄、歌声の謎に合理的な説明がつくはずだ、究明したい、となるわけで、類似(?)の現象としてイルカセラピーの話も出てきます。説明として作者はひとつの仮説(?)を提示しています。その医学的な妥当性についてはまったくわかりませんが、素人目にもちょっとどうかな、そんなことありうるかな、と思わないでもないので、納得できない人もいらっしゃるでしょう。いっそ説明不可能なこととしてしまったほうがよかったのかもしれません。しかし、物語を駆動させる仕掛けとしてはよくできていると思います。この仮説が作者の発想の出発点になったのだと思いますが、これから派生したいくつもの物語の要素を投げ込みつつ展開されているストーリーは十分楽しめました。
物語の終盤は、少女の救出行で活劇シーンとなって冒険小説らしくなります。少女のラストのせりふ、単純だけど、なかなかよかったです。


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