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出られない五人 [日本の作家 蒼井上鷹]


出られない五人 (祥伝社文庫)

出られない五人 (祥伝社文庫)

  • 作者: 蒼井 上鷹
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/10/14
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
廃ビル地下のバーに男女六人と死体が二つ。急逝した作家を偲び、彼の馴染みだった店の跡で一晩語り明かそうという企画のはずだったのに、死体が出てくるわ、闖入者まで出てくるわで、事態は混迷の極みに。なのに、参加者は皆、地下から「出たくない」という!? 秘密と誤解にちょっとした偶然が重なって、とんでもない方向へと転がっていく、密室エンターテインメント!

蒼井上鷹さんの作品には期待しているのですが、ちょっとこの作品はハズレかもしれません。
広い意味でのミステリではあると思いますが、ミステリというよりは、ミステリ的な設定でのシチュエーション・コメディというべき作品のような気がします。登場人物の設定からして、しゃれたユーモアではなく、泥臭い笑い、ですが。
数少ない登場人物が密室状態のところに閉じ込められる、という設定は、ミステリでは一つの定番かと思いますが、推理合戦とか心理戦といった展開をこの作品はとらず、最後の方に展開されるドタバタ劇が象徴的です。
そもそも「閉じ込められている」というほどの状況ではなく、勝手に「閉じこもっている」というのに近い点からして、ひねったユーモアの発露なのかも。
とはいえ、ミステリ的な趣向がまったく凝らされていないのか、というとそうではなく、蒼井上鷹らしいひねった仕掛けは用意されています。ただ、そのせっかくの仕込みが有効打となっていないというか、展開に埋没してしまっていて、驚けません。なんだか中途半端に使われてしまっている印象で、もったいない。エピローグも、伏線はあちこちに張ってあるのに、なんだか付け足しっぽく見えてしまいました。本当にもったいない。
場面は限定されているので、たくさん盛り込まれているエピソードを整理して、ミステリとしての趣向を前面に出した上で、舞台化すればミステリ劇として結構いけるんじゃないかと、そんなことをふと妄想しました。
この作品では、アイデアがちょっと空回りした気がしますが、仕掛ける姿勢は積極的に支持したいので、次の作品にも大きく期待します。
タグ:蒼井上鷹
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