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五声のリチェルカーレ [日本の作家 深水黎一郎]

また更新が空いてしまいました...さておき、


五声のリチェルカーレ (創元推理文庫)

五声のリチェルカーレ (創元推理文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/01/30
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
昆虫好きの、おとなしい少年による殺人。その少年は、なぜか動機だけは黙して語らない。家裁調査官の森本が接見から得たのは「生きていたから殺した」という謎の言葉だった。無差別殺人の告白なのか、それとも――。少年の回想と森本の調査に秘められた<真相>は、最後まで誰にも見破れない。技巧を尽くした表題作に、短編「シンリガクの実験」を併録した、文庫オリジナル作品。


帯には
「計算し尽くされた<企み>を誰も最後まで見破れない。
 少年は何故、そして誰を殺したのか。」
と書かれています。
登場人物が限られているので、「誰を」を見抜くことはそれほどむずかしくはないかもしれません。
しかし、何故殺したのか、という動機の部分がとてもすばらしく、独創的だなと思いました。
生物(昆虫に限りません)の擬態についての蘊蓄が、動機ときれいに結びついていて、すーっと頭に入ってきます。
蘊蓄といえば、タイトルにもなっているリチェルカーレなど音楽の話題も盛り込まれています。こちらは<企み>の方に関連してきます。「フーガとリチェルカーレはほぼ同じもので、時代的な呼び方の違いでしかない」(P112)らしいです。知りませんでした。
どちらの薀蓄も、必然性があって展開されているうえ、まったく知らないこちらにもきちんと整理されて伝わるので、読んでいるのが楽しくなります。
<企み>のほうは、あらすじと帯を見れば、ああそのパターンか、と察しがついてしまうわけですが、この作品の場合ちょっと毛色が違うように思いました。
普通、仕掛けのある作品は、仕掛けが明かされる前にはどこかしら不自然というか、違和感というか、ひっかかりがあるものですが、この作品の場合きわめてナチュラルな手触りなのが特徴ではないでしょうか。個人的には、逆に仕掛けが明かされてからのほうに違和感を覚えたほどです。
大きな話題には思いのほかならなかったようですが、充実した良い作品だと思います。
タグ:深水黎一郎
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