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レイニー・レイニー・ブルー [日本の作家 柄刀一]

レイニー・レイニー・ブルー (光文社文庫)

レイニー・レイニー・ブルー (光文社文庫)

  • 作者: 柄刀 一
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
怜悧な頭脳とシャープな風貌。そして、毒を含んだ皮肉な発言。車椅子の名探偵「熊ん蜂」こと熊谷斗志八が、女性介護福祉士をワトソン役に、周囲で起きる不可思議な事件を推理する。障害者の抱えるさまざまな問題を背景に、やさしい視線と堅牢な論理が交錯する「柄刀本格」の白眉ともいうべき傑作連作集。
著者が挑んだ最大の謎は、生きていることの、この奇跡だ。

「ifの迷宮」 (光文社文庫)にも登場した車椅子の青年・熊谷斗志八を探偵役に据えた連作短編集です。
主人公のキャラがキャラなので、素直に読めなかったですね。
舌鋒鋭いのはよいのですが(ミステリにはよく登場するキャラクター設定なので)、その毒舌ぶりを「時に高飛車な表現を採って口をひらく“熊ん蜂”も、理性的で優しい心根の持ち主かもしれないと真理江も感じ始めてはいた。彼がそうした口をきくのには、それなりの理由がある、と。」などと視点人物に地の文で解釈されてしまっては、ちょっと白けてしまいます。エピソードの積み重ねで読者自身に納得させてほしかった。さらに、コーヒーとせんべいという取り合わせに異をとなえ、ヨウカンならましだといったのに対しても、「甘い物でもどんどん食べて気持ちを立ち直らせなさい、という励ましの意味を含んでいるのかもしれない……」なんて、いくらなんでも好意的に解釈しすぎでしょう。
障害者に対する作者のまなざしが、障害者を特別視することがないものになっているのはすごいなぁ、と思い、それはこのキャラクターのおかげだと重々理解はできたのですが。
ミステリとしての仕掛けも、考えて作りこまれているのでしょうが、どうも感銘が薄かったですね。表題作の「レイニー・レイニー・ブルー」なんて、気づかないのが不思議なくらいの平凡な謎で、失踪事件の真相もアンフェアというかいかさまというか、掟破りすぎて苦笑してしまいます。ほかの作品も、無理が多かったり、既視感漂うものだったりで、「密室の中のジョゼフィーヌ」を除いては、ピンときませんでした。
そんななか「密室の中のジョゼフィーヌ」はおすすめ、です。合鍵をつくることのできない鍵という前提から、意表を突いた真相を導き出してくれます。うーん、そう来たか、という感じ。
どうも作者の思惑と、こちらの感度がずれちゃっていたようです。
柄刀一は、非常に切れ味のある作品を出していますので、メインの登場人物の違う別の作品に期待します。
タグ:柄刀一
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