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帽子収集狂事件 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]

帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)

帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/03/24
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
《いかれ帽子屋》による連続帽子盗難事件が話題を呼ぶロンドン。ポオの未発表原稿を盗まれた古書収集家もまた、その被害に遭っていた。そんな折、ロンドン塔の逆賊門で彼の甥の死体が発見される。古書収集家の盗まれたシルクハットをかぶせられて……。比類なき舞台設定と驚天動地の大トリックで、全世界のミステリファンをうならせてきた、フェル博士シリーズを代表する傑作!

旧訳版で読んでいます。新訳になったので再読。
ディクスン・カーです。フェル博士です。
「密室をはじめとする不可能犯罪を得意とし、怪奇趣味の横溢する、作品によってはファースといってもいいほど諧謔の要素が多分に含まれている、というのが、ディクスン・カーの作風」(解説からの引用)であることからするとそれほど、らしくない、ので、あらすじにあるような「代表」とまでいえないのでは、というご意見がネット上含めありますが、「代表」であろうとなかろうと、この作品は傑作ですので、ぜひ! --個人的には、ロンドン塔を舞台にした時点で十分怪奇趣味のような気もしていますけれどね。
タイトルにもなっている“連続帽子かっぱらい事件”、“ポーの未発表原稿盗難事件”、“ロンドン塔での殺人事件”というバラバラな3つの事件を、狭い関係者のなかで構築して見せたカーの手腕は素晴らしいと思います。狭いせいで、事件の構図が予見しやすい、という鋭いご指摘もあるようですが、その境地に至れるのは相当鋭い読者に限られると思いますし、真相全体には行き当たらないのではないかと思います。予見しやすいというのは、きちんと仕組まれた本格ミステリの宿命でもありますし、見当がついたとしても十分楽しんで読めると思います。
殺人事件で使われているトリックですが、この作品が最初の作例というわけではないと思いますが、非常に鮮やかに使われていると思います。初読時は、この切れ味に本当にびっくりしたものです。なによりこのトリックのおかげで、陰と陽が入れ替わるような反転を示してくれるのがたまりません。と同時に、状況を考えるとなんともいえないおかしさ(当事者にとっては笑いごとではないのですが)が漂ってくるのもポイント高い! 横溝正史の某作 (ネタバレになるのでタイトルは書きません。amazonへのリンクは張っておきますので気になる方はネタバレ覚悟でお願いします)にも、この「帽子収集狂事件」を意識したような部分がありますね。
なんにせよ、再読でも十二分に楽しみました。やっぱりディクスン・カーはいい!!

ところで、“The Mad Hatter Mystery”という原題を最初に帽子収集狂事件と訳したのはどなたでしょうね? 「不思議の国のアリス」 (リンクは大好きな「とびだししかけえほん」に張りました。すごいので一度ぜひご覧ください。)を念頭にした原題ですが、「いかれ帽子屋」とか「気違い帽子屋」となるところを、日本語訳に際して「収集」という語を足したあたり素晴らしいだと思います。
<蛇足>
P326で、「ウォータールーの戦い」というのが出てくるのですが、日本ではワーテルローの戦い、と呼ぶと思います。Waterlooは確かに英語での発音はウォータールーですけどね。

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