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ラットマン [日本の作家 道尾秀介]


ラットマン (光文社文庫)

ラットマン (光文社文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/07/08
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
結成14年のアマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、ある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇する。次々に浮かび上がるバンドメンバーの隠された素顔。事件の真相が判明したとき、亮が秘めてきた過去の衝撃的記憶が呼び覚まされる。本当の仲間とは、家族とは、愛とは――。いまもっとも旬な作家・道尾秀介が思いを込めた「傑作」、ついに文庫化。

「シャドウ」 (創元推理文庫)「ソロモンの犬」 (文春文庫) に続く、初期の青春三部作のラストを飾る作品です。
「2009 本格ミステリベスト10」 第2位、2008年週刊文春ミステリーベスト10 第4位、「このミステリーがすごい! 2009年版」第10位。
タイトルは、P72に掲載されている錯視(騙し絵?)から来ています。
ネットだと、こちらが楽しいと思います。(勝手にリンクを張っています)
叙述トリックをよく使う道尾秀介が、タイトルに騙し絵を使う。こりゃ、なにかあるな、と身構えてしまうわけですが、この作品の構成はなかなかいいなぁ、と思いました。
作者が繰り返し言う、「ミステリの手法は人間を描くための手段であって、目的ではない」という言葉に照らしてみると、手段である手法が、きっちりミステリとしてのおもしろさにつながっている作品だと感じます。
手法としては「信頼ならない語り手」のバリエーションなのですが、現在と過去、双方について読者に対してすべてをあからさまにはしない語り手・姫川亮が、ミステリとして非常に大きなポイントとなっています。
通常の叙述トリックとは違う意味で、立派に叙述がトリックになっている、というか、読者に対する有効な仕掛けとなっていました。
後半にたたみかけるどんでん返しの内容そのもの(真相)は、見当がついてしまう読者が多いと思われますが、それは、「信頼できない語り手」が「信頼できる語り手」となる瞬間と重なるものであるため、不満を感じないのではないかと思います。手段と目的が、着地で一致した作品ではないでしょうか。
道尾作品の中でも上位に置いておきたい作品です。
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