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柩の花嫁 ― 聖なる血の城 [日本の作家 か行]


柩の花嫁―聖なる血の城 (講談社文庫)

柩の花嫁―聖なる血の城 (講談社文庫)

  • 作者: 黒崎 緑
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ブルゴーニュのシャトー・ホテルに、日本人の新婚カップルが到着した。豪華な結婚披露宴に招かれて、花嫁の友人たちも同行したが、新妻の香菜は青ざめて、何かに怯えている様子。そしてパーティの夜、ホテルの塔が燃え上り、若い女性の無惨な焼死体が……。暗い情熱のもたらした悲劇を華麗に描く、推理長編。

ジョナサン・キャロルの「月の骨」 (創元推理文庫) (ブログへのリンクはこちら)ほどではないにせよ、これまたかなり積んだままだった本です。
作者の黒崎緑は1989年(!) に「ワイングラスは殺意に満ちて」 (文春文庫)でサントリー・ミステリー大賞の読者賞を受賞した作家ですが、最近とんと新刊がでませんね。どうされているのでしょうか?
びっくりするようなトリックを仕掛けたり、めくるめくロジックで圧倒したり、あるいは強烈な個性を持つ登場人物で幻惑したり、といったところのない、すなわちあんまりとがったところのない作家なので、強く訴えかけるということはないのかもしれませんが、「お洒落」なミステリを書こうとされている姿勢は読んだどの長編作品(*)からもうかがえましたし、若い女性が好みそうな作風は、実はミステリ界を見渡してもあまり見かけない隙間なので、もっともっと頑張ってほしい気がします。
(*) 黒崎緑には、「しゃべくり探偵―ボケ・ホームズとツッコミ・ワトソンの冒険」 (創元推理文庫)にはじまる短編シリーズがあって、そちらは和戸君と保住君という二人組の関西弁の会話主体でつづられたミステリなのですが、これは通常の意味の「お洒落」には入らないと思うので、長編に限定しました。でも、このシリーズも、ほぼ会話だけで構成されるという粋な趣向が凝らされており、考えようによってはお洒落といえるとは思います。

デビュー作はワインでしたし、「聖なる死の塔」 (講談社文庫)は女子学園と修道女、そしてこの作品はフランスのシャトー・ホテルと、題材や舞台からも、引用したあらすじでは「華麗」と表現されていますが、「お洒落」を目指しているというのが、おわかりいただけるのではないでしょうか?
ウェディング・ドレスでの焼身自殺(?)で塔から転落なんて、結構派手な演出もこの作品では登場します。ちょっと無理なんじゃないかな、と思えるトリックですが、舞台にはマッチしていますね。そのあたりも見どころかと。
ところで、ウェディング・ドレスでの焼死体というと、山村美紗の「燃えた花嫁」 (講談社文庫)を思い出しました。派手な演出には派手なトリックが似合うのでしょうか? 山村美紗のトリックもなかなか印象的でした。

ひさしぶりに黒崎緑の作品を読んで、結構楽しみました。また新刊を出してもらえるとうれしいですね。
タグ:黒崎緑
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