硝子のドレス [日本の作家 か行]
<裏表紙あらすじ>
菅見は、同級生だった千夏からの親しげな留守電メッセージを交際中の実咲に聞かれた。それから実咲の様子が変わり、忽然と姿を消してしまう。残されたアルバムから、ダイエットコンテストを主催する社の女との関わりを突き止めるが……。ダイエット美女選考裏側で、痩せることが全てと思いつめた女たちの果てなき欲望、葛藤、孤独な闘い。華やかなコンテストに隠された謎と狂気の本格心理サスペンス。
「僕を殺した女」 (新潮文庫)でデビューした北川歩実の第2作です。第2作なんですが、文庫になるのが遅かったですね。なるべくなら刊行順に読みたい、という変な願望を持っているのですが、さすがに待ちきれずに、「金のゆりかご」 (集英社文庫)、「模造人格」 (幻冬舎文庫)や「猿の証言」 (文春文庫)を先に読んじゃいました。
作風としては、科学的(あんまり理系といういい方はしたくないですね)な知識をベースに、強引なまでに大胆なプロットを押し出してくる、貴重なタイプで、気に入っています。
今回の作品のテーマは、あらすじにもあるように、ダイエット。痩せたい願望が行きつく先には...というところ。
タイトルがいいですよね。
「硝子のドレス」
中を読むまではなんのことだろうと思っていたのですが、シンデレラからの連想です。シンデレラが硝子の靴で、この作品は硝子のドレス。シンデレラに出てくるのが靴ではなくドレスだったら、身に着けるために女性はどんなことをするのだろうか、と。王子様を射とめるため、むりやり合わない硝子の靴に合わせようと踵を斬ってしまう継姉たちなら、ドレスに合わせるのに、どんな手段をとるのだろう、と、考えただけでもぞっとしますね。
本書でも、絶食や拒食はては麻薬に...と恐ろしい世界が展開されます。
事件が一応の解決をみて、ほっとしたあとの最後のエピソードなんて、もう、ホラーの領域に足を突っ込んでいるのではないでしょうか。
ミステリ部分の強引さはさすがにマイナスかもしれませんが、このタイトルの余韻が強く印象に残ります。
タグ:北川歩実
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