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最初に探偵が死んだ [日本の作家 蒼井上鷹]


最初に探偵が死んだ (実業之日本社文庫)

最初に探偵が死んだ (実業之日本社文庫)

  • 作者: 蒼井 上鷹
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2011/08/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
雪の山荘で起きた連続殺人。
解決するのは誰だ!?

作家・星野万丈の莫大な遺産を受け継いだ内野宗也は、四人の養子に遺産相続の権利を与えていた。ところが、新たな養子候補が現われたことから不穏な動きが。内野の依頼を受けて、一族が集う雪の山荘に向った名探偵・笛木日出男だが、何者かにいきなり殺されてしまう。残された一族の運命、そして遺産は誰の手に!? 奇妙な展開、でも謎解きは本格派の長編ミステリー!

最初に探偵が死んだ、というと、赤川次郎の「裁きの終った日」 (文春文庫) という前例があります。「裁きの終った日」 は残った人たちの物語だったわけですが、この作品は最初の(?)被害者の幽霊がその探偵の幽霊とともに推理する(!)、というのが大きく違いますね。相変わらず変なことを考える作家です。素晴らしい。
幽霊と言っても、自由に動き回れるわけではなく、一定の場所から出られない、という設定もなかなか興味深く、一幕物の芝居を幽霊の眼を通してみているような感じになっています。
ストーリーは、雪の山荘という舞台設定で展開されるわけですが、気持ちよく(?)ばったばったと殺されていきます。
結構風変わりな動機が取り上げられていて、ミステリ的には前例のあるものなのですが、ちょっと虚をつかれました。あからさまな伏線を作者は張っているのですが、まさかそう来るとは。
幽霊探偵の趣向があったり、警察が登場したり(雪の山荘って、あんまり警察は出てこないですよね)、異色の展開を見せますが、この作品は、某有名作の変奏曲を狙ったものではないかと思っています。
あわただしい展開も、どうもミステリとしてはいびつな設定も、そしてちょっとあんまりだなぁと思える動機も、すべてがこの「某有名作の変奏曲をやりたい」というところに結びついているように思えます。それでいて、某有名作とはまったく違うテイストの作品に仕上がっているのがポイントですね。サスペンスあふれる本格ミステリ、という形になりがちなモチーフを、全然違う形で提示してみせたところがよいと思います。確かに、この作品のように、にぎやかになってもおかしくない、なんて考えたりしました。
「俺が俺に殺されて」 (祥伝社文庫) (ブログへのリンクはこちら)のときは、有名なフランス作品の(テーマの)「変奏曲」と思ったわけですが、今回も古典へのリスペクト(?) を感じてしまいました。
これはこれで、おもしろい作風だと思いますので、今後もたまにはこういう古典へのオマージュ(?)を書いてみてほしいです。
タグ:蒼井上鷹
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