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蠅の王 [日本の作家 田中啓文]


蝿の王 (角川ホラー文庫)

蝿の王 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ある遺跡で無数の赤子の骨とひとつの壷が発見された。その封印が解かれたとき、人類は未曾有の危機を迎えた。突如、東京では児童殺人が頻発する。そこには必ず虫が大量発生するという怪現象が…。その最中、ひとりの少女が身に覚えのない妊娠をした。頭の中では自分の子を産み、〈ベルゼブブ〉からこの世を救えという声が響きわたる。ベルゼブブとは? 前人未到の伝奇ホラーの扉が開かれる! (『ベルゼブブ』改題)

田中啓文のホラーです。
同じ角川ホラー文庫からでていた「水霊  ミズチ」 (角川ホラー文庫)が面白かった記憶があり、楽しみにしていました。--とかいいながら4年も積読ですみません。
単行本のときのタイトルは「ベルゼブブ」で、文庫化にあたって改題されました。
あとがきにある改題の理由が傑作(?)です。「どうして改題したかというと、『ベルゼブブ』ではわけがわからないという意見が出たからで、たしかにそうかもしれない。ベルゼブブが古代の蠅の王であり、反キリストのあくまであることをしっているひとには、なにも説明しないでもわかってもらえるだろうが、まあ、そういうひとは世の中には少ない。」「そんなわけで本書は『蠅の王』というタイトルになってしまったのだが、アレとまちがえて購入してくれるひともいるかもしれないという淡い期待も込めてのタイトル変更である」 !! アレと間違える人はいないので(だって、こちらはホラー文庫ですよ。タイトルが同じでも、アレと間違うことはありえない)、あとがきの記載はギャクというのは自明なわけですが、まあ、編集者に改題を無理強いされたのでしょうね。
ホラーといっても、怖い、より、気持ち悪い、方を目指した作品であるように思いました。
気持ち悪さの出発点は、虫。タイトルの蠅、もそうですが、いろいろな虫が登場して、気持ち悪いこと、気持ち悪いこと。それは、それはすさまじく、おぞましい。ちょっと苦手、です。
今まで読んだ中では、貴志祐介の「天使の囀り」 (角川ホラー文庫)がとびきり気持ち悪かったのですが、それに勝るとも劣らない衝撃力でした。
その後、天使と悪魔の戦いへと移行するわけですが、主人公というか、狂言回しの少女はじめとする登場人物が敵役の方も含めて、もう少ししっかりしていたらもっとおもしろくなったのでは、と少し残念でした。特に子供の使い方が、定型的ながら印象的だったので、余計に大人の登場人物のあり方が残念です。
田中啓文のいつもの駄洒落を封印して話が進んでいくのですが、最後のほう(P554とP623)で、やっぱり出てきたときには、大笑いすると同時に、感心してしまいました。この作品の発想のもとって、ひょっとしてここなんじゃあ? 
駄洒落からスタートしたアイデアが(と勝手に決めつけて)、これほどまでの壮大なホラー作品になる、というのがすごいですね。さすがは田中啓文、です。
永見緋太郎シリーズ(「落下する緑―永見緋太郎の事件簿」 (創元推理文庫) など)や落語もの(「ハナシがちがう!  笑酔亭梅寿謎解噺」 (集英社文庫) など)とは違った田中啓文をお楽しみください。
あとがきでも
「私も最近、人情話のひとのように思われているようなので、またこういったタイプのヤバい伝奇ホラーをばんばん書こうと思っております。ご期待くださいませ。」
とありますので、今後も幅広い作風が期待できると思います。

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