黒衣の女 ある亡霊の物語 [海外の作家 は行]
<裏表紙あらすじ>
広大な沼地と河口に面し、わずかに水上に出た土手道で村とつながるだけ。その館は冷たく光りながら堂々とそそり立っていた。弁護士のキップスは、亡くなった老婦人の遺産整理のため、館にひとり泊まりこむことになる。だが立ちこめる霧があたりを覆うと、想像もできなかった怪奇が襲いかかった…孤立した館にしのび寄る恐怖をじっくりと描きあげ、伝統ある英国ゴースト・ストーリーの歴史に新たなページをひらいた傑作。
今年最初に読んだ本です。
映画「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」の原作です。映画化されたので、新装版として復刊されたのですね。映画を観る前に、急いで読みました。映画の感想はこちら。
この原作、ホラーの古典だと思っていました。でも、原書の発行は1983年。ちっとも古典じゃない! いや、まあ確かに30年も前の作品ではありますが、古典という年代ではないですよね。
復刊になる前は、ハヤカワ文庫の「モダンホラー・セレクション」だったので、そもそも誤解だというのは明白でしたが、思い込みは怖いですねぇ。
でも、モダンホラー、でもないですよ。正統派のホラーですね。ジャンル分けすると、ゴシック・ホラーになるのでしょうか。
この小説は、映画版と違って、現在のパートが導入部分と結びとなる額縁形式をとっています。
幸せな現在と対比させることで、恐怖の過去を印象づける、効果的な手法だといえます。
一方で、語り手が回想するという枠組みなので、恐怖だホラーだといっても、主人公は今なお生きているわけだし、怖いといっても殺されたわけじゃないよね、ということがわかりきっているということでもあります。また、語り手が、怖い怖いと言い募るので、本当にそんなに怖いのだろうな、と逆効果になる懸念もあります。
そこをどうさばくか、というのが作者の腕の見せ所、となるわけですが、額縁形式の様式美が、きちんと効果を挙げていて、ここだという着地にたどりつきます。
230ページほどの短い作品ですが、古典じゃないと冒頭言ったものの、古典と呼んでもよいような風格の、堂々たる名作だと思いました。
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