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ドラゴン・ティアーズ 龍涙 ― 池袋ウエストゲートパークⅨ [日本の作家 石田衣良]


ドラゴン・ティアーズ 龍涙―池袋ウエストゲートパーク〈9〉 (文春文庫)

ドラゴン・ティアーズ 龍涙―池袋ウエストゲートパーク〈9〉 (文春文庫)

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/09/02
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
時給300円弱。茨城の“奴隷工場”から19歳の中国人少女が脱走した。彼女が戻らないと、250人の研修生は全員が強制送還される。タイムリミットは1週間。捜索を依頼されたマコトは、チャイナタウンの裏組織“東龍(トンロン)”に近づく。彼女の事情を知り、板ばさみになり悩むマコト。万策つきた時、マコトの母が考えた秘策とは?

「現代の水戸黄門(小説版)」の第9弾です。快調です。
今回取り上げられている社会問題は
・エステ詐欺
・失業保険詐欺(ホームレス詐欺)
・出会い喫茶
・中国人派遣生の労働問題
です。
今回も手際よく、それぞれの問題を料理し、エンターテイメントに仕立てています。このシリーズの構図については、前作「非正規レジスタンス ― 池袋ウエストゲートパークⅧ」 (文春文庫)の感想(ブログへのリンクはこちら)に書いたのでそちらをご参照ください。
表題作でもある最終話の解決策には、ちょっと驚かされました。
誤解のないように申し添えておくと、ミステリ的に驚いたのではありません。
解決策としては非常に平凡で、誰でも思いつくものです。実際に、この作品の早い段階で、そういう解決策があること自体は提示されています。ただ、その方法ではあまりに局所的というか、極私的というか、場当たりというか、目の前の事態そのものだけは解決できても、問題の構造には一切手を触れずに目を瞑ったままだし、平凡とはいえ実際に実現させるにはハードルがあると思われるので、小説の中とはいってもそんな解決策は取らないだろう、とおそらく読者の誰もが思うところを、そこへ目がけて突き進んでいくので、意表を突かれるのです。あっぱれ、母ちゃん! というところ。
この解決策は、シリーズにとって非常に重い意味を持つものでもあり、シリーズの今後に俄然興味が湧いてきました。

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