SSブログ

銀輪の覇者 [日本の作家 さ行]


銀輪の覇者 上 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1)銀輪の覇者 下 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2)銀輪の覇者 下 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2)
  • 作者: 斎藤 純
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2007/08/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
軍靴の音が忍び寄る昭和9年。かすかな地響きをあげ、数多の自転車が中山道を疾走する。国策に反して高い賞金の懸けられた本州横断大日本サイクルレースには、企業チームやドイツからの海外チーム、個人参加の選手たちがひしめいていた。ある決意を胸に秘める響木健吾は、有望な個人選手を集めて即席チームを組む。素姓も目的も不明な彼らが力を合わせたとき予想外の事態が! すべての走る男たちに捧げる自転車冒険小説。<上巻>
一攫千金の夢や国の威信、様々な思惑を乗せて、男たちが超長距離を自転車でひた走る大日本サイクルレース。謎の男・響木の率いるチーム門脇は、強豪を相手に熱戦を展開していた。だが、他チームの妨害により響木が負傷。さらに殺人や復讐といった過去のしがらみが選手たちを追い詰める。一方レースを中止にせんと陸軍が暗躍し、苦戦を強いられた選手たちは次第に心を一つにしてゆく。最高の疾走感と感動を届ける冒険大作。<下巻>

「このミステリーがすごい! 2005年版」第5位です。
斎藤純の現時点での代表作といってよいと思います。
自転車のロードレースを題材に、ということでは近藤史恵の「サクリファイス」 (新潮文庫)(ブログの感想へのリンクはこちら)もそうですが、この「銀輪の覇者」 (上)  (下)は、戦前が舞台で、しかも、ロードレースとはいっても、競技用の自転車ではなく、商業用自転車を使ったもの、です。
下関から青森まで走破する、というのですから、大日本サイクルレース、かなりの大風呂敷です。
レースの中身そのものに加えて、レースが無事開催できるかどうか(オリンピックへ向けて、自転車競技のアマチュア化をすすめる帝都輪士会からの横やりと、支援を申し出る謎の人物たち)、出場選手の過去・来歴、取材するフランス人記者、参加を目論む(?)女性選手など、さまざまな要素がちりばめられて、超長距離のレースが描き出されます。
戦前の雰囲気を色濃く出したストーリー展開です。
もともと作者の斎藤純さんの作品は、デビュー作の「テニス、そして殺人者のタンゴ」 (講談社文庫)から楽しく読んできましたが、日本推理作家協会賞を受賞した「ル・ジタン」 (双葉文庫)もそうですが、文章が読んでいて心地よく、寡作なのが残念な作家です。
この「銀輪の覇者」 (上)  (下)は作風ががらっとかわり、ロードレースという一般にはなじみの薄い題材(しかも普通の競技とは違うところが多々あり)で、舞台も戦前ということで、説明部分が多くなってはいるものの、文章は快調。ひさしぶりに、ずいぶん楽しみました。
レースを取り巻く状況も楽しいですが、まず、なによりレースの中身、選手たちの戦いぶり、が一番のよみどころだと思います。
上巻の帯に、「『深夜プラス1 』に比肩する興奮!」と書いてあるのですが、「深夜プラス1」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)というよりは、解説にも触れられているようにアメリカ大陸横断マラソンを題材にした「遥かなるセントラルパーク」 〈上〉 〈下〉 (文春文庫)ですね、連想するのなら。「深夜プラス1」 を引き合いに出したい気持ちもよくわかるのですが...
主人公格である響木が組成する即席チームが、ほぼ素人の寄せ集めながら、よく戦い抜く様子に、熱くなれます。
とてもおもしろかったので、斎藤純にはぜひ新作を!とリクエストしたいです。
nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0