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大相撲殺人事件 [日本の作家 か行]


大相撲殺人事件 (文春文庫)

大相撲殺人事件 (文春文庫)

  • 作者: 小森 健太朗
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ひょんなことから相撲部屋に入門したアメリカの青年マークは、将来有望な力士としてデビュー。しかし、彼を待っていたのは角界に吹き荒れる殺戮の嵐だった! 立合いの瞬間、爆死する力士、頭のない前頭、密室状態の土俵で殺された行司……本格ミステリと相撲、その伝統と格式が奇跡的に融合した伝説の奇書。

小森健太朗って、東大で哲学を学んでいたんですよね。
「このミステリーがすごい!」に寄稿している近況を見ても、なにやら難しげなことが書かれていたりして、身構えてしまいますよねー。
でも、あの「ローウェル城の密室」 (ハルキ文庫)の作者なんだから、脱力系の作品を書いていてもおかしくないですよね。
この「大相撲殺人事件」を読めば、みごとに脱力できます。
そもそも探偵役のマークが「千代楽部屋」に入門する経緯からしてでたらめです。通りがかった若者に「千代楽部屋」の読み方をきいたところ、「センダイガク」と読まれたから、大学と勘違いして入っちゃう....そんなバカな!? 
もう冒頭の部分だけで、まじめに読んではいけない本であることが明示されているのです。
扱われる事件もすごいですよ。
冒頭の「土俵爆殺事件」はタイトル通り、立ち合いでぶつかった力士二人が爆発する(!)、という事件で、なかば裸なのにどうやって、というハウダニットだったりするのですが、いやいや、そのど派手な事件ぶりは、オーケストラの指揮者がベートーベンの運命の強音とともに爆殺される由良三郎の「運命交響曲殺人事件」 (文春文庫)以来でしょうか?(笑)
第二話「頭のない前頭」のトリックは、まともではありますが、あまりにも有名なトリックなので苦笑せざるをえません。
第三話の「対戦力士連続殺害事件」なんて、「幕の虎」という四股名となり戦績よく幕ノ内となったマークと対戦するはずの相手が、どんどん殺されまくる、というストーリーで、なんと豪快にも幕ノ内力士14名が殺されるという...挙句、明かされる動機がすごい。14人も殺す理由がそれかぁ、と必ずびっくりできることでしょう。
第四話「女人禁制の密室」は土俵の中央で死体が見つかった事件で、土俵は女人禁制で関係者が女性ばかりだから密室だ(なぜなら女性は土俵に上がれない!)、という設定。
子供しか通れない穴をめぐる密室状況の第五話「最強力士アゾート」のトリックも、明かされれば力の抜けること間違いなし。
最終話「黒相撲館の殺人」では、鎧兜を着て、相手の命を奪うまで戦う「黒相撲」「黒力士」なるものを創出し、時代の闇に葬られた黒相撲を復活させようという陰謀(?)が描かれます。
解説の奥泉光によれば、『「本格」ミステリが根本に持つ、ナンセンスと紙一重の馬鹿馬鹿しさが強烈に匂い立つゆえなのであり、その徹底ぶりはほとんど批評的であるとさえいってよい』『本書がかりにナンセンスに見えるとしても、だからそれは「本格魂」のなせるわざなのであり、そのことが、作品としてなかなか成立させるのがむずかしいナンセンスをむしろ可能にしているともいえるだろう』ということなので、そう珍重して真面目に読むもよし、徹底的な馬鹿馬鹿しいお話として笑い飛ばすもよし、小森健太朗の曲者ぶりをご堪能ください。

タグ:小森健太朗
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