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ファントム [海外の作家 か行]




<裏表紙あらすじ>
美しい田舎町に異変が起こった。一夜にして全住民五百人が死んだのだ! たまたま町を出ていて助かった二人の姉妹は、生者を捜してゴースト・タウンをさまよった。この惨劇の原因は、いったい何か--悪疫、放射能、それとも細菌兵器か? 次々とはっけんされる死体は、胸のむかつく異様な死体ばかり。首や手を切断されオーブンに入れられた男もいた。そして死体には黒い痣が浮かび、顔には恐怖の叫びが凍り付いていた…… <上巻>
未曾有の大量殺人事件が発生した町へ通じる道路はすべて封鎖された。しかも、町には警察の他にも生物化学戦課防衛隊まで調査に乗り出している。だが、手がかりは浴室に残された文字―〈太古からの敵〉ただひとつ。やがて人々は、姿なき殺人鬼の前にひとり、またひとりといたずらに屍の山を築いていくが……。名実ともにスティーヴン・キングと肩を並べるベストセラー作家が、全米の読者を心底から戦慄させた傑作! <下巻>


モダンホラーの巨匠ディーン・R・クーンツの出世作です。映画化もされています。
原書は1983年ということなので、30年も前の作品なんですね。今読んでも十分おもしろいです。

前半、スノーフィールドという町を襲った惨劇を、たまたま町を離れていたので逃れることができた姉妹の目を通して、徐々に徐々に明らかにしていきます。
まずこのミステリータッチなところがおもしろい。
当然、生存者であるこの二人も警察に疑いの目を向けられる。で、この二人は無実だと信じるものも警察にはいて、協力していく、という王道中の王道ともいえる筋書きが展開していきます。この種の物語にこういう展開はぴったりなんですねぇ、とてもスムーズに読み進むことができました。
常識では考えられない、というか、普通だったらありえない現場や被害者の状況に、この世ならぬ物の存在を感じるわけですが、一方でやはり科学で説明できることしか信じない人たちも出てきて混乱する、というのも王道ですね。
上巻の133ページに、
「彼女(姉妹のうちの姉ジェニーを指します)は確信した--感じた、知った--彼らの誰一人として、この町を生きては出られないだろうと。」
と書かれていて、早々に不吉なわけですが、何が起こったかを追求する物語であると同時に、見えない敵とどう戦うか、あるいはどうやって逃げ延びるかを探る物語でもあります。
本筋と離れた部分ですが、この太古からの敵が、ロアノーク島の移民団の失跡、マヤ族の消失、さらにはバミューダ・トライアングルやマリー・セレステ号事件を引き起こしたのだ、という説明には、非常に強烈な印象を受けました。なるほどねー、と感心。恐竜の絶滅も説明できちゃうぞ! こういう風呂敷の広げ方、大好きです。
「知性や自意識というものを、知的な生き物を食べるようになってはじめて得た」敵という考え方から、「ほんとうの意味での悪魔は、人間にほかならない」と論を進めていく点も、ちゃんとストーリー展開に生かされていて、ベストセラー作家の腕の確かさを感じました。
コンピュータを通して、この敵と会話するシーンも、とても恐ろしいと同時にわくわくしました。

もっともっと早く読めばよかったと、いつものように反省しました。









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