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富士覚醒 [日本の作家 あ行]


富士覚醒 (講談社文庫)

富士覚醒 (講談社文庫)

  • 作者: 石黒 耀
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/05/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
火山学者の一人娘で女子高生の真紀と、同級生の亮輔。二人が富士山麓で発見した謎の遺跡から、かつて、富士が未知の大火砕流を起こしたことが判明する。そのころ、周辺では低周波地震が頻発。ついに、富士が眠りから覚める。最新の科学データに基づく、地変シミュレーション小説。 〈『昼は雲の柱』を改題・加筆〉


「死都日本」 (講談社文庫)が霧島火山帯で起こる破局噴火、「震災列島」 (講談社文庫)が東海・東南海地震、と来て、今度の「富士覚醒」 はタイトルどおり富士山の噴火です。

前作「震災列島」 はミステリ仕立てにした部分が弱くて残念でしたが、それでも災害の部分は迫力満点で十分楽しめました。
今回も人間ドラマの部分がやはり弱いのですが、全体として十分おもしろかったです。

単に富士噴火という災害だけを扱うのではなく、徐福伝説をはじめ神話や歴史なんかも絡んできます。
「古代において、神は最大の武器だ。より強い神を持つ部族がライバルを圧倒できる」(426ページ)
なるほどねー。
だから、モーゼが有能だったと(二つの点で人類史上類のない新しい神を創造したことからわかる。一つは形のはっきりしない抽象神を創造した点。二つめはフィクションとノンフィクションをうまく混ぜて、ただのファンタジーではないリアルさを追求した点だ。旧約聖書ほど考古学的証拠が沢山見つかる古代神話はちょっとない。これがモーゼの宗教革命だったのだよ)。
また「自然科学は宗教だよ」(116ページ)というのも、時折言われることですが、この物語にぴったりですね。
「自然科学も宗教も目的は同じ。世界を構築する摂理を求めて進化してきた。その摂理を創った存在を自然という漠然とした存在と考えるか、創造神という具体的な存在と考えるかの違いにすぎない。ただ、結果的には、自然界の現象を矛盾なく説明できるよう柔軟に経典を書き換えてこれた唯一の宗教が自然科学だったというだけのことさ」
うまいこと言いますねぇ。

さて本題の富士噴火ですが、こちらはたっぷり楽しめます。
いろいろと勉強にもなります。
たとえば、溶岩流。意外なことに平均時速は 6キロメートルくらいなんですね。一方、火砕流(大火砕流と言わないといけないのでしょうね)は早いんですね。時速 100キロメートルくらいと書かれています。作中の試算では、発生から十七分で御殿場を全滅させます。
火砕流、灰神楽、熱泥流、火山灰....
解説を、静岡大学防災総合センター教授の小山真人さんが書かれていて、こちらも読み応え十分。

この「富士覚醒」 のあと災害物は書かれていないようですが、ぜひまた書いていただきたいです。




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