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月光の誘惑 [日本の作家 赤川次郎]


月光の誘惑

月光の誘惑

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/01/22
  • メディア: 単行本


<裏表紙側帯あらすじ>
あの子に手を出さないで。この「月光」が終わるまでは――
十五年前、高校生の美紀は自殺をする気でやって来た岬で、見知らぬ女から赤ん坊を託された。美紀の娘として育てられた涼子は、ピアノに打ち込む快活な十六歳の少女へと成長。しかし教師の不倫発覚、美紀の父の愛人騒動といった醜聞に巻き込まれた母娘は、謂れのない憎悪の的にされ、美紀が娘のために封印した秘密に魔の手が忍び寄る――!


単行本です。
冒頭プロローグで、女子高生の美紀が自殺しようとして赤ん坊・涼子と出会う(?) シーンが描かれます。
そしてその後は、時代がぐんと進んで、涼子は高校生になっています。美紀は母親として涼子を育てたよう。
ここでちょっと考え込んでしまいました。
女子高生が赤ん坊を連れて帰って自分の子供として育てる。しかも、こっそり(?)。もちろん、両親には知らせずにはいられないのでしょうが、警察にも言わず、公的な手続きもふまずというのは、うーん、無理がありますね。
この後も、赤川次郎の作品らしく、美紀の両親の離婚騒動や、そこにかかわる後妻に入ろうとする女、美紀の妹爽子を巡る問題に 涼子の学校の先生の不倫騒動とにぎやかに、いろいろな難題が美紀・涼子にはふりかかってきます。
赤川次郎の筆さばきはいつも通り順調なのですが、やはり最初の無理が気になってしまって、話にすんなり乗り切れませんでした。あおりを食らったのか、なんだかどの問題にも無理が目立ってしまったように思います。
しかも、物語の後半で、プロローグのシーンを美紀の口から説明する場面があるのですが、プロローグと美紀の話の内容のつじつまが合わない! もちろん、地の文で書かれているプロローグと、登場人物の口から語られる説明が矛盾すれば、登場人物が嘘を吐いた(地の文には嘘を書けないので)という解釈がありうるわけですが、美紀が嘘を吐く理由もなく、嘘の内容も美紀にとって不都合ですっきりしないとあっては...

そのあたりの問題や設定の不自然さに目を瞑れば(そんなに目を瞑ると何も見えない! と言われてしまうかもしれませんね)、いつもの赤川次郎が楽しめます。
美紀と涼子のダブル・ヒロイン的な物語になっています。
美紀は「君はどうしてそんなに優しいんだ」と言われるくらい、わが身に不幸を一心に背負ってしまうキャラクターになってしまっていますが、やはり物語の中心にいる涼子が特徴的でよいですね。複雑な家庭環境で育ったというのに、非常にのびやかに、健やかに育っていて、いつもの赤川次郎のヒロイン像です。
今後は、美紀と涼子の母娘の将来が明るいものでありますように。

<2017.05追記>
2016年7月に文庫化されていました。書影を。

月光の誘惑 (新潮文庫)


タグ:赤川次郎
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