トムは真夜中の庭で [海外の作家 は行]
<裏表紙あらすじ>
友だちもなく退屈しきっていたトムは,真夜中に古時計が13も時を打つのをきき,昼間はなかったはずの庭園に誘いだされて,ヴィクトリア時代のふしぎな少女と友だちになります。歴史と幻想が織りなす傑作ファンタジー。
この本、昔から気にはなっていてずっと前に購入していたのですが、例によって積読。
ジム・ケリーの「水時計」 (創元推理文庫)の解説で、杉江松恋さんが、イーリーが舞台ということで、この「トムは真夜中の庭で」 を紹介されていまして、おお、(やはり)読んでみようとそのとき思いました。だけど、「水時計」 を読んだのは2013年1月。それからもほぼ2年積読にしてしまっていました。
結論としては、もっと早く読めばよかったなぁ、と思いました。
児童書ではありますが、結構素敵なファンタジーですね。
最初とっつきにくくて、読みづらい印象だったのですが、物語が進むにつれ、殊にタイトルにもなっている庭での出来事が始まると、ずんずん読み進めることができました。
あらすじに「ヴィクトリア朝時代のふしぎな少女と友だちにな」ると書いてあるので、若干ネタバレ気味ながら書いてしまいますと、トムは庭を介してタイムトラベル(?) をすることになります。
ファンタジー(あるいはSF? )の一つの典型的なパターンを踏襲しているわけですが、このディテールが凝っていて楽しめました。
ファンタジーといっても全般的には落ち着いたトーンなので、冒険もの的なファンタジーを想定すると期待外れになりますが、なかなかに味わい深い作品です。
丁寧に書き込まれているので、ゆったり読むのがふさわしいですね。子供が読むと、退屈しちゃう可能性もありますね。
訳文がちょっと古臭いのも、かえって雰囲気が出ているような...
ネタバレついでに(?) 書いてしまいますと、この種のストーリーでは、主人公たちの“出会い”はなかなかに扱いが難しいと思うのですが、アパートと庭を介在させることで、自然に“出会い”を演出していていいなぁと思いました。
やはり圧巻は、1895年の大氷結を背景としたスケートのシーンでしょうか。
うーん、イーリーに行ってみたくなりましたね。
ところで、表紙絵も挿絵も、原著から引いたものだと思うのですが、ちっともかわいくないですね。むしろ、怖いくらい...
原題:Tom's Midnight Garden
著者:Philippa Pearce
刊行:1958
タグ:フィリッパ・ピアス
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