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ギリシャ棺の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


ギリシャ棺の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

ギリシャ棺の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/07/30
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
盲目のギリシャ人美術商ハルキスの葬儀が厳粛におこなわれた直後、遺言書をおさめた鋼の箱が屋敷の金庫から消えた。警察による捜索が難航する中、クイーン警視の息子エラリーが意外なありかを推理する。だが、捜査陣がそこで見つけたのは、身元不明の腐乱死体だった――〈国名シリーズ〉第四作は、若き名探偵が挑む“最初の難事件”にして、歴史に残る傑作である。


旧訳で2回読んでいます。
1回は子供の頃に、無邪気に読んでいました。長くて、難しい印象。楽しめませんでした。
なにしろ、「ギリシャ棺の謎」 は若きエラリー・クイーンが失敗を犯す話、ということは覚えていたけれど、その失敗をある程度時間が経ってから挽回する話だと思い込んでいたくらいですから。
ちっとも読めていなかった、ということですね。

で、この「ギリシャ棺の謎」 (創元推理文庫)が、かなり重要な作品(法月綸太郎さんが指摘された後期クイーン問題とか)であるということで、大人になってから再読。
でも、そのときもピンと来ていなかったですね。

そして今回新訳登場。今度こそと思って読みました。
結論からいうと、楽しんで読めましたが、クイーン問題とか難しいことは今回もピンと来なかったですね。
読者としては、あまり難しすぎることは考えずに、素直に楽しめばいいような気がします。クイーン最長、とのことですが、十二分に堅牢なミステリを楽しめますから。
それにしても、堅牢で、長大ではありますが、わかりにくいところはありません。子供の頃はともかく、大人になってもちゃんと読めていなかったなんて、しっかりしろ、と言いたいです、あの頃の自分に。

エラリー・クイーンが失敗することから、
「もしぼくがこの誓約を破るところを見かけたら、遠慮なく、ぼくの脳味噌に鉛玉をぶちこんでください。今後、ぼくが興味を持ったいかなる事件においても、その犯罪のすべての要素を継ぎ合わせ、すべての曖昧な点にしっかりした説明がつくまでは、もう二度と、解決を発表したりしません」(268ページ)
というセリフが生まれています。
名探偵が最後まで答えを口にしない定型的な言い訳ですね。
注意してくれ、じゃなくて、殺してくれ、というあたりは、若気の至りでしょうか!?

この作品では父親のクイーン警視がお茶目に感じました。
関係者を監視下に置くといったあとセリフ。
「皆さんが愉快だろうが、不愉快だろうが--こっちは痛くももかゆくもない!」(165ページ)
クイーン警視って、こういうキャラクターでしたっけ?
実際に発せられるとお茶目なセリフではないんでしょうが、今の目から見ると、お茶目に感じてしまいました。
337ページでひとりで深夜(早朝?)にコーヒーを淹れるくだりも、なんだかかわいいですね。

二転三転する展開は、本格ミステリの醍醐味十分なんですが、不満もありまして、それは真犯人。
これだけの事件を起こしたにしては、ちょっと大物感に欠けませんか?
という不満と同時に、この犯人の設定はそれなりにニタニタしてしまう仕掛けでもありまして、エラリー・クイーン、さすがだなぁ、というところ。

読むときはちゃんと読みましょう、という反省をしつつ、新訳のおかげでちゃんと楽しむことができたことを感謝します。


<蛇足1>
「鼓膜に突き刺さる沈黙」(337ページ)って、どういう状態でしょうね?
矛盾した表現ながら、なんだか迫ってくるものがあります。翻訳ものではありますが、こういう表現を見つけるのも小説を読む楽しみですね。

もう一つ、同じページに「総領息子」という表現が出てくるのですが、これ原文はどうなっているんでしょう??

<蛇足2>
この作品、色覚異常に関してミスがあることで有名ですが、あまりに初歩的なミスなので、ミスだミスだと騒ぐほどのこともないか、と言う感じ。解説で辻真先は「作品全体の価値に決定的な影響はない」と書いていますが、確かに小さな部分ではありますが、それなりにキーとなるところだと思うので、残念なミスですね。


原題:The Greek Coffin Mystery
作者:Ellery Queen
刊行:1932年


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