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黒揚羽の夏 [日本の作家 か行]


黒揚羽の夏 (ポプラ文庫ピュアフル)

黒揚羽の夏 (ポプラ文庫ピュアフル)

  • 作者: 倉数 茂
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2011/07/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
離婚協議中の両親の都合で、祖父のいる東北の田舎に預けられた千秋、美和、颯太。町に台風が訪れた日、美和は水たまりに映る不気味な女の姿を見る。それが不可解な事件の始まりだった。押入れから出てきた六十年前の日記、相次ぐ少女の失踪、奇妙な映画のフィルム……交錯する現在と過去に翻弄されながらも、千秋たちは真相に迫る。圧倒的な世界観で全選考委員を魅了したピュアフル小説賞「大賞」受賞作。妖しくも美しいひと夏のミステリー。


第1回ピュアフル小説賞「大賞」受賞作だそうです。
ピュアフル小説賞だし、出版されたレーベルがポプラ文庫だし、視点人物は少年少女だし、冒頭に明らかに子供が描いたとおぼしき地図が掲げられているし、あきらかにジュブナイル、あるいはヤング・アダルト向け作品ですが、扱われている内容はかなりビターです。
「ミステリマガジン 2011年 10月号」 で紹介されているのを読んで興味を持って、買いました。「解説で金原瑞人が『虚無への供物 』(講談社文庫)を引き合いに出していた」なんて書かれているのですから、ミステリファンとしては、むむむ、と思うではないですか。
解説には
「ミステリ? 幻想小説? ファンタジー? ジュブナイル? ヤングアダルト? 文芸? エンタテイメント?
どれにもあてはまるけど、どれからも見事にはみ出してしまう。それが、この『黒揚羽の夏』だ」
「ミステリ好きにも、推理小説好きにも、探偵小説好きにも、幻想小説好きにも、ジュブナイル好きにも、ヤングアダルト好きにも、文芸好きにも、エンタテイメント好きにも、進めたい一冊。」
と書かれています。
「虚無への供物 」が引き合いに出されたのは、内容・方向性が似ているということではなく、「それまでにない、とらえどころのない作品」という観点が共通するとして、でした。うーん、なるほど。
それぞれのジャンルからはみ出してしまう部分こそが本書の肝のようにも思いますが(だからこそ、金原瑞人も「虚無への供物 」を引き合いに出したのでしょう)、この作品が湛える独特の雰囲気がポイントのように感じました。
物語の構成要素が数多く盛り込まれていて(殺人事件、自動車泥棒、怪談話、炭鉱争議、古い映画などなど)、それぞれはさほど深掘りされません。さまざまな町の姿を、くるくると見せてくれているようです。
また人物描写というか、キャラクターがそっけない一方で、さびれた田舎のありさまやタイトルにもあるように夏の情景は、くっきりとしています。
この雰囲気を味わうのが良い作品だと強く思いました。

今、amazon.co.jp を見てみると、続編(?) 「魔術師たちの秋」 (ポプラ文庫ピュアフル)が出ているようですね。
そちらも気になります。



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