神様の裏の顔 [日本の作家 は行]
<裏表紙側帯あらすじ>
「ああ坪井さん、お気の毒にねえ。神様のような人だったわ」
神様のような清廉潔白な教師、坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙した――と思いきや、年齢も職業も多様な参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり……。
聖職者か、それとも稀代の犯罪者か――驚愕のラストを誰かと共有したくなる、読後感強烈ミステリ!!
単行本です。
第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
作者の藤崎翔は、6年間お笑い芸人として活動していたそうです。
ちまたでは、又吉直樹が「火花」芥川賞を受賞したことが話題となっていますが、タレントと作家は近しいのではなかろうか、と思ったりもします。
故人の人間像が、次々とひっくり返っていく様子が大きなポイントとなる作品ですが、まずここがよくできているなぁ、と思いました。
語り手となる人物のかき分けもきちんとされていますし、文章も読みやすい。
それだけ尖ったところがない、とも言えますが、読者になだらかに読み進ませる、というのは美点だと思います。
そして、お笑い芸人出身だから、というわけではないでしょうが、ユーモラスなところも楽しい。
ただ、難点を挙げると、ラストのどんでん返しの部分でしょうか。
ミステリとしてのサプライズのための不可欠の仕掛け、ということだったのでしょうが、ちょっとありきたり。
個人的には好きになりにくいタイプの仕掛けだったこともあり、ここまで頑張って(無理に)意外なラストを仕掛ける必要はなかったのではなかろうか、と。
そして、このラストにするなら、伏線をもっともっと露骨なかたちで書き込んでおいて欲しいところ。
故人の人間像の部分だけでも十分おもしろいミステリとして成立したのではないでしょうか。
それだけの力はお持ちの作家のように感じました。
7人がディスカッションを通して、人間像に迫るわけですが、エピソードの重なり具合とか、ずれ具合も、かなり気を配って設計されているようです。
ということで、ちょっと落ちに不満はありますが、これはデビュー作、有望な作家の誕生ではないかと期待します。
<2016.8追記>
文庫化されました。
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