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カッコウの卵は誰のもの [日本の作家 東野圭吾]


カッコウの卵は誰のもの (光文社文庫)

カッコウの卵は誰のもの (光文社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/02/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
往年のトップスキーヤー緋田宏昌は、妻の死を機に驚くべきことを知る。一人娘の風美は彼の実の娘ではなかったのだ。苦悩しつつも愛情を注いだ娘は、彼をも凌ぐスキーヤーに成長した。そんな二人の前に才能と遺伝子の関係を研究する科学者が現れる。彼への協力を拒みつつ、娘の出生の秘密を探ろうとする緋田。そんな中、風美の大会出場を妨害する脅迫者が現れる――。


印象的なのはタイトルですね。
カッコウで、卵、ときたら、托卵、ですね。
世界大百科事典 第2版の解説によると、
「自分では巣をつくらずに,ほかの種の鳥の巣に卵を産みこみ,その後の世話をその巣の親鳥にまかせてしまう鳥の習性。ホトトギス科,ミツオシエ科,ムクドリモドキ科,ハタオリドリ科,ガンカモ科の鳥に見られる。この習性について最もよく調べられているのは,ホトトギス科のホトトギス属の鳥,特にカッコウである。これらの鳥では,雌は自分の卵を1個産みこむと同時に,巣の中の卵を1個くわえとり,飲みこむか捨てるかしてしまう。 」
あらすじにも主人公緋田と娘風美には血がつながっていないことが示されています。
とすると、実の親がカッコウで、風美が托卵された卵、緋田は託された親鳥、という構図ですね。
で、タイトルが問いかけているのは、「風美は誰のものか」。

風美は、スキーヤーとして図抜けて素晴らしい才能を発揮していきます。ワールドカップ云々というレベルですから、まさにトップレベルの才能。
本書には同様に才能を持つ若者が描かれます。鳥越伸吾。才能はあるけれど、ほかにやりたいこと(ギター)があるので練習に身が入らない。クロスカントリーの練習中に、彼がこう思うシーンがあります。
「全く暗いスポーツだ、と伸吾は思う。競技人口が増えないのもわかる。これならマラソンの方がましだ。もっとも俺はマラソンだってやりたくないけど――」(163ページ)
そんな彼が遭遇する地元の高校のスキー部員フジイ、クロサワとのやりとりも、味があります。
まさに「スポーツへの姿勢も人それぞれだ」(384ページ)です。
スポーツシーンは、いつもながら楽しく読めましたし。

つまり、親子とは、才能とは、という2つのテーマが取り上げられているわけです。贅沢...

終盤
「才能の遺伝ってのはさ、いわばカッコウの卵みたいなもんだと思う。本人の知らないうちに、こっそりと潜まされているわけだ。」(366ページ)
というセリフもあり、とすると、ここで2つのテーマが一つに結ばれた、ということができます。

すっきり割り切れるようなテーマではないので、賛否はひとそれぞれだと思いますが、この2つのテーマに、東野圭吾は一つの答えを提示した、ということでしょうか?

一方でミステリの方は、とっちらかった感じです。
ミステリ、サスペンスとしては、東野圭吾にはもっと切れ味を求めたいところ。

動機も犯行手段も、いまひとつ説得力に欠けるように思いました。
また事件の遠因となる(起点となる?)、緋田の妻の自殺のエピソードも、まったくあり得ないとまでは思わないけれど、もうすこし丁寧に説明してほしいところです。



<蛇足>
339ページ、「早急」にちゃんと「さっきゅう」とルビが振ってあって、うれしくなりました。
もう、「そうきゅう」と間違って読む人の方が多数派のようで悲しく思っていたので、まだまだ大丈夫かな、と。

タグ:東野圭吾
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