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悪魔と警視庁 [海外の作家 E・C・R・ロラック]


悪魔と警視庁 (創元推理文庫)

悪魔と警視庁 (創元推理文庫)

  • 作者: E・C・R・ロラック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/03/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
濃霧に包まれた晩秋のロンドン。帰庁途中のマクドナルド首席警部は、深夜の街路で引ったくりから女性を救った後、車を警視庁に置いて帰宅した。翌日、彼は車の後部座席に、悪魔(メフィストフェレス)の装束をまとった刺殺死体を発見する。捜査に乗り出したマクドナルドは、同夜老オペラ歌手の車に、ナイフと『ファウストの劫罰』の楽譜が残されていたことを掴む。英国本格黄金期の傑作、本邦初訳。

帯に
「クリスティに比肩する英国探偵小説黄金期もう一人の女王」
とあります。
森英俊の解説によると七十一編の長編を書いているそうで、まさに女王と呼ぶにふさわしい作家だったのですね。
ロラックの作品は、「ジョン・ブラウンの死体」 (国書刊行会)を読んだことがあります。ずいぶん前(2002年)に読んだのでよく覚えてはいないのですが、派手なところはないものの、すっきりしたいい作品だったように思っています。

一方この「悪魔と警視庁」は、道具だてというか、見た目が派手です。死体が警部の車の中で発見され、その死体はメフィストフェレスの扮装。
ところがこの魅力的な、ものものしい導入は、さすがロラックというべきか、わりとあっさりと、きわめて現実的な説明が付されてしまいます(ロンドンの霧はどこまで深いんだと少し疑念に思ったりもしますが、ロンドンに限らず深い霧というのは恐ろしく視界を損ねるものなので、まあ本書のような事態もありうるかもしれません)。
290ページほどの、近年の作品と比べると薄いといってしまっていいくらいの長さですが、人の出し入れはかなり行われ、古典ミステリにつきもの(?) の訊問に次ぐ訊問、長々とした証人尋問の羅列といったと違い、てきぱきと進んでいくのは注目すべきところなのだろうと思います。

小粒ながら、なかなかいい雰囲気だと思いましたので、その後訳された
「鐘楼の蝙蝠」 (創元推理文庫)
「曲がり角の死体」 (創元推理文庫)
にも期待します。

それにしても、
「わたしが好意をもったのは、彼が興味深い混合物だったからです。」(160ページ)って、すごい変な日本語ですねぇ。
「ベッドはベッドに可能なかぎり心地よく」(215ページ)というのも強烈です。
訳者の藤村裕美さんは訳書が多数あるベテランだと思うのですが、もうすこし、まともな日本語にならなかったんでしょうか?


原題:The Devil and The C.I.D.
作者:E.C.R. Lorac
刊行:1938年
翻訳:藤村裕美






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