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黄金のアデーレ 名画の帰還 [映画]

黄金のアデーレ T0020398p.jpg


映画のHPから引用します。

数奇な運命を辿った名画に秘められた真実の物語が、今、明かされる--。
82歳の女性と駆け出し弁護士が国を訴えた!?
20世紀が終わる頃、ある裁判のニュースが世界を仰天させた。アメリカに暮らすマリア・アルトマン(82歳)が、オーストリア政府を訴えたのだ。
“オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に飾られてきたクリムトの名画〈黄金のアデーレ〉を、「私に返してほしい」という驚きの要求だった。伯母・アデーレの肖像画は、第二次世界大戦中、ナチスに略奪されたもので、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいというのが、彼女の主張だった。共に立ち上がったのは、駆け出し弁護士のランディ。対するオーストリア政府は、真っ向から反論。
大切なものすべてを奪われ、祖国を捨てたマリアが、クリムトの名画よりも本当に取り戻したかったものとは──?


昨日感想を書いた「ミケランジェロ・プロジェクト」と2本立てでした。
「ミケランジェロ・プロジェクト」に続いて、実話に基づいた物語、でした。

この「黄金のアデーレ 名画の帰還」は、なにより主役マリア・アルトマンを演じるヘレン・ミレンが素敵です。
82歳という役柄にしては若々しいですが、品があって、とてもチャーミングです。
プライド、というよりも、なんだか、矜持、と呼びたい感じの心持ちの、背筋がぴんと伸びた女性です。
ラストで、本物のマリアの写真も出てきましたが、これも矜持ある女性という感じで素敵でしたねぇ。

弁護士役のライアン・レイノルズも、あまり弁護士、弁護士した雰囲気なく、いい感じですね。

名画として知られているクリムトの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」の所有権をめぐる争いです。
マリアの伯母アデーレを描いたこの絵は、マリアの家族がクリムトに描かせたもので、ナチが襲ってきたときに奪われてしまったもの。

物語は、個人対国家という裁判というおもしろい展開になります。
素人なので、誤解もあると思いますが、流れを書いておきます。
オーストリアが制定した美術品返還法に基づき、オーストリア(ウィーン)で委員会に提訴。
オーストリア政府側は、アデーレの遺言(夫の死後は美術館に寄贈したい)に裏打ちされている、と主張。
一方で、マリア&ランディは、アデーレの夫の死よりも前に絵は奪われていることを明らかにし、さらに、絵の正当な所有者はマリアではなく、マリアの夫である伯父さんであることを代金の支払い状況から確認し、かつ、伯父は財産をすべて姪に残すことを遺言で決めていたことをつきとめて、提出。
結果は、マリアに換返還せず。どう考えても、マリアの方に正当性はあるように見受けられるんですが、まあ、オーストリアに対する訴えをオーストリアでやるとこうなりかねないですよね。
オーストリアで裁判を起こすには、保証金180万ドル(!)を積まなければならず、断念。

ところが、オーストリアをアメリカで訴える方法がある! というのが次のポイントになります。
3つの要件を満たせば、ということで、見事に満たすことが判明して裁判に。
ここで、裁判は、アメリカの裁判所に管轄権があるかどうか、がまず争われていきます。
最高裁まで行くシーンは、ある意味一つのクライマックスですね。
で、マリア側が勝訴したけれど、今度はそれから、絵の実際の所有権の帰属をめぐる裁判に。
オーストリア側が徹底した引き延ばし作戦をとる中、高齢のマリアが、数次にわたる裁判をやり遂げられるのか? 
和解の申し出をオーストリア側が断ったことから、ランディはオーストリアでの調停をしようとする。
で、あれっ? と素人としては思うわけです。
調停って...調停案には拘束性がないので、気に入らなければマリアは従わなければよいはず...なのに、絶対的な判決みたいな感じで扱われている。
これ、仲裁、とすべきところを、誤訳でしょうねぇ。と思って、ググったら、弁護士の方のHPに解説がありました。ネットってありがたいですね。
はい、やはり、仲裁、というべきでしょうねぇ、日本語の感覚からすると。

さておき、マリアにしてみれば、気の進まなかったアメリカでの訴訟がせっかく軌道にのっているのに、どうしてオーストリアの仲裁をランディが選ぶのか、ということなんでしょうねぇ。完全アウェイですし、最初の委員会のようになることを考えてしまいますよね。
一方でランディにしてみれば、賭けは賭けだけれど、マリアの年齢を考えると...というところ。
ここは難しい判断ですね。映画では、マリア演じるヘレン・ミレンが若く見えるので、ぴんと来ないのが難点でしょうか。

もう一つの注目は、マリアによるウィーンの回想シーン。こちらも素敵でした。
(いや、もちろん、ナチに蹂躙されていくことが分かっているので、楽しそうであればあるほどつらくなるんですが...)
非常に豪華な、そしてハイソな一族で、楽しめます。

実は事実に基づいた話ってことで、あまり期待していなかったのですが、うれしい誤算。
とても楽しく、充実した映画でした。


最後に、いつものシネマ・トゥデイからも引用しておきます。

チェック:ナチスに奪われた世界的に有名なグスタフ・クリムトの名画を取り戻すため、オーストリア政府を相手に返還訴訟を起こした女性の実話を基に描いた人間ドラマ。肖像画のモデルとなった女性のめいで、戦争に運命を翻弄(ほんろう)された実在の主人公をオスカー女優ヘレン・ミレンが好演する。彼女とタッグを組む弁護士に、『[リミット]』などのライアン・レイノルズがふんし、『ラッシュ/プライドと友情』などのダニエル・ブリュールらが共演。『マリリン 7日間の恋』などのサイモン・カーティスがメガホンを取る。

ストーリー:アメリカ在住の82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、グスタフ・クリムトが描いた伯母の肖像画で第2次世界大戦中ナチスに奪われた名画が、オーストリアにあることを知る。彼女は新米弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)の助けを借り、オーストリア政府に絵画の返還を求めて訴訟を起こす。法廷闘争の一方、マリアは自身の半生を振り返り……。


<蛇足>
個人的にはこの絵、ウィーンのベルベデーレ美術館で見たような気がします...
返還前、ですね。


原題:WOMAN IN GOLD
製作年:2015年
製作国:アメリカ / イギリス




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