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秀頼、西へ [日本の作家 岡田秀文]


秀頼、西へ (光文社時代小説文庫)

秀頼、西へ (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 岡田 秀文
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
戦国末期。天下を手中にしようとしていた徳川家康は、大坂城に配下の者を忍び込ませた。一方、真田大助は、父・幸村より、落城の際には秀頼を連れ出し落ち延びよ、という密命を受ける。目指すは薩摩、島津家の元。燃えさかる大坂城を脱出した一行は西へ――。誰が味方で誰が敵なのか? 行く手には、想像を絶する謀略が待ち受けていた! 
迫真の傑作時代ミステリー。


岡田秀文は、カバー袖の作者紹介にもありますが、1999年「見知らぬ侍」で第21回小説推理新人賞を受賞し、2002年に「太閤暗殺」 (双葉文庫)で第5回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した作家です。
「太閤暗殺」 は読んでいます。
中身はほとんど覚えていないんですが、おもしろかったと思います。
岡田秀文は、ここ数年「伊藤博文邸の怪事件」 (光文社文庫)「黒龍荘の惨劇」(光文社)が評判ですね。
「伊藤博文邸の怪事件」 を買ってあって、読む前に岡田秀文の別の昔の本も読んでおこうと思って、この「秀頼、西へ」 を手に取りました。
単行本の時のタイトルは「落ちた花は西へ奔れ」だったのですが、文庫化で「秀頼、西へ」 へタイトルが変更されています。
中身がわかりやすくなりましたね。
大坂夏の陣で淀君と豊臣秀頼は自決し、豊臣家は滅亡した、という史実がありますが、実は秀頼は生き延びて西へ逃れたていた...と。
解説の細谷正充によると、こういう伝説があるんですね。

主人公は、真田幸村の息子大助。おっ、地味...
でも、この地味さがいい感じに仕上がっています。
一種の成長物語にもなっていますし、大坂城にいた侍女茜との恋(?) もあり、娯楽小説の王道です!

しかし、この作品はポイントはやはり、張り巡らされている策謀・謀略、でしょう。
徳川家康や本多正純、片桐且元に真田幸村・大助父子、そして薩摩の島津義弘に息子の家久。
誰が敵で、誰が味方なのか。
一見敵のようで味方、味方のようで敵、なんて生ぬるい方で、一見敵のようで味方と見せかけた敵なんかもいますし、そもそも何を目指すかによって、味方か敵か自体がくるくると入れ替わってしまう。そんなこの時代ならではの化かし合いがみどころです。
家康と島津義弘なんて、まあ、キツネとタヌキというと、キツネやタヌキが「俺たちそこまで性格悪くないよ」と怒って来そうな...
ラストで明かされるそれぞれの思惑は、なかなか深いです。
一方で、大助・茜がさわやかな読後感を残してくれます。

なかなかよかったですね。
今さらながら、岡田秀文、ちょっと注目です。


<蛇足>
楽しく読みましたが、
「申しわけございません。」(379ページ)
というせりふはあまりにも興ざめですねぇ。


タグ:岡田秀文
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