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京都寺町三条のホームズ [日本の作家 ま行]


京都寺町三条のホームズ (双葉文庫)

京都寺町三条のホームズ (双葉文庫)

  • 作者: 望月 麻衣
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
京都の寺町三条商店街にポツリとたたずむ、骨董品店『蔵』。女子高生の真城葵はひょんなことから、そこの店主の息子、家頭清貴と知り合い、アルバイトを始めることになる。清貴は、物腰は柔らかいが恐ろしく勘が鋭く、『寺町のホームズ』と呼ばれていた。葵は清貴とともに、客から持ち込まれる、骨董品にまつわる様々な依頼を受けるが―古都を舞台にした、傑作ライトミステリー!


結構人気があるシリーズのようです。
このシリーズ第1作「京都寺町三条のホームズ」 (双葉文庫)が出たのが2015年4月。
すでに
「真贋事件簿-京都寺町三条のホームズ(2)」 (双葉文庫)
「浮世に秘めた想い-京都寺町三条のホームズ(3)」 (双葉文庫)
「ミステリアスなお茶会-京都寺町三条のホームズ(4)」 (双葉文庫)
「シャーロキアンの宴と春の嵐-京都寺町三条のホームズ(5)」 (双葉文庫)
と第5作まで出ています。

帯に
E☆エブリスタ【ミステリ・推理小説】ランキング第1
と書いてあります。
しかし、これをミステリとして評価するのは相当苦しいと思います...
引用したあらすじの最後に「ライトミステリー」とあり、作者によるあとがきでも「よし、それじゃあ、京都を舞台にしたライトミステリーを書こう!」となっていますが、ライトもライト。軽すぎて、薄すぎて、もう、ミステリーの味、ほとんどしませんよ。
ライトミステリーというのは、定義が今一つ定かではありませんが、きっと、ミステリとは別物なのでしょう。
よくある「京風~」が、京都の人から見たらちっとも京都を感じさせないものであるのと同じなんですね。

帯にはさらに「いけずな京男子が鑑定するのは骨董品に秘められた謎」と書いてあります。
骨董品に秘められた謎、というのも実際のところはよくわかりません。どこに謎があったのかしらん??
あと、ホームズと呼ばれている家頭清貴(やがしらきよたか)というのが「いけずな京男子」なわけですが、ちっともいけずではありません。
文中にも、頻繁に葵が清貴のことをいけず、いけずというのですが、どこがいけずなんでしょう。こんなかわいいの、いけずのうちには入りませんよ。

とまあ、悪口にしか思えないコメントを連ねてきましたが、でも、この作品、おもしろかったかどうかというと、おもしろかったんです、個人的に。ミステリとしての評価は別にしまして。厳密にいうと、小説としての評価も別にして、となりますが(ケータイ小説やラノベにまともな小説としての結構を求めるな、というお声もあるでしょうから)。

そもそも、骨董品を扱いながら、その来歴を問うたり、あるいは真贋を争ったりしない、というのがすばらしい。

また、いかにもな、わざとらしい京都がずんずん出てくるところがいいではありませんか。
文章とか雰囲気はちっとも京都を感じさせませんが、そのかわり、地名や事物、祭りなどで京都を押しつけていく感じ、楽しいです。
京都というのは、意外と舞台にするのが難しい場所だと思います。観光という観点で観るのと、暮らしという観点で観るのとの落差が定まりにくい地だと思うので。
作者は2013年から京都にお住まいとのこと、京都のいいところ、悪いところ、きちんとご覧になったうえで、選んで、掬い上げて小説に盛り込んでおられるのでしょう。京都以外の地の人が読んだ時のわかりやすさを最重要視しながら。
(それでも、京都の仲居さんは、「こちらのお席を用意させていただきました」(198ページ)とは言わないでしょう。まあ、最近の若い仲居さんならいうかもしれませんが)
1年や2年住んだからって、京都の何がわかると言うのか、という京都の人がいいそうなことは言いません。京都素人から観てのわかりやすさ、こそがこの作品の身上だと思いますから。
さきほど申し上げた通り、これはライトミステリー。京風であればよいのです。

ホームズこと清貴と、葵の関係も、わかりやすいっちゃあわかりやすいんですが、その分親しみやすい。
清貴の、父、祖父のキャラクターも、ほどよく奇矯でなかなかよろしい。
この雰囲気は、きっとずっと楽しめます。(文章がもうすこしまともならもっとよい)

そしてもう一つ、この作品はミステリらしさがほとんどありませんが、この作者、ミステリがお好きなんじゃないかと思うんです。
ホームズという名を使っていて、あとがきで、「敬愛するコナン・ドイル先生」と書いているから、だけではなく、作中、ちらちらとミステリっぽい手法やノリが紛れ込んでいるように思われるからです。
そちらの風味を強く打ち出してもらえたら、個人的にはさらに親しみやすくなるのにな、と思いました。











タグ:望月麻衣
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