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アンドロイドは電気羊の夢を見るか? [海外の作家 た行]


アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

  • 作者: フィリップ・K・ディック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1977/03/01
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を所有することが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡した〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! 現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描き上げためくるめく白昼夢の世界! 〔映画化名「ブレードランナー」〕


映画「ブレードランナー2049」を観て、久しぶりに読み返そうと買いました。
映画の感想を昨日書いたので、本の感想は今月(12月)読んだ本を書いてきたところですが、もどって11月に読んだこの本を。
ぼくが買った版では、表紙に非常に大きい帯(もはや帯とはいえず第2のカバーとでもいうべき大きさですが)がかかっていて、映画化仕様という感じです。
実は映画「ブレードランナー」も、この「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」も、以前はあまり感銘を受けず、覚えているところがほとんどありませんでした。
ところが、「ブレードランナー2049」を観たら、「ブレードランナー」がよみがえってきて、勢いをかって「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を読んじゃえと思った、ということです。

いやあ、おもしろいじゃないですか、やはり。もちろん、わからない点も多々残ってはいるのですが...
どうして最初に読んだとき感銘を受けなかったのかな? と不思議におもうほど。
たぶん、映画「ブレードランナー」の印象にひきずられすぎたのかも。
そして、いつも読んでいるミステリのようにかちっとピースが嵌っていかないと満足できなかったからかも。

今回読み返してみて、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」のポイントは、イメージの奔流に身をゆだねることだな、と感じました。そもそもSFというのはそうやって読むものなのかもしれませんが。

映画「ブレードランナー」を観てから読むと、ハリソン・フォード(リック・デッカード)に嫁がいるよ...まずそこに驚けるわけですが(笑)、情調(ムード)オルガンとか人工物でないペットを飼いたがるとか、未来っぽい要素とイメージは、まずこのデッカードの家庭から気づかされます。スムーズですね。
デッカードのほかにも、アンドロイドを匿うことになる(?)イジドア、という主要人物が登場します。そしてアンドロイド。
共感(エンパシー)ボックスとウィルバー・マーサー(マーサー教? の教祖?)。そして印象的なレイチェル。フォークト=カンプフ検査。
人間とは? アンドロイドとは? 人間らしさとは? 人間とアンドロイドの区別は?
このテーマが、イメージの奔流のなかで浮かび上がってきます。
訳者あとがき、数々の引用含めディックおよびこの作品について解説してくれているので、鑑賞の手引きとしてちょうどいいように思いました。

<蛇足1>
「服装はぞろっぺえだが」(37ページ)
という文章が出てきます。ぞろっぺえ...
ネットで調べたら、「(主に関東地方で)いい加減でだらしないこと。また、そういう人や、そのさま。ぞろっぺい。ぞろっぺ。」らしいです。
へぇ...

<蛇足2>
「キップルってのは、ダイレクト・メールとか、からっぽのマッチ箱とか、ガムの包み紙とか、きのうの新聞とか、そういう役に立たないもののことさ。だれも見てないと、キップルはどんどん子供を産みはじめる。たとえば、きみの部屋になにかキップルをおきっぱなしで寝てごらん、つぎの朝に目がさめると、そいつが倍にもふえているよ。ほっとくと、ぐんぐんおおきくなっていく」
「それがキップルの第一法則なんだ。グレシャムの悪貨の法則とおんなじで、『キップルはキップルでないものを駆逐する』のさ。」(86ページ)
いやあ、納得。うちにもキップルいます...
でも、グレシャムの悪貨の法則をさらっと口に出すような人物が、マル特=特殊者(スペシャル)認定されるんですねぇ。


原題:Do Androids Dream of Electric Sheep?
作者:Philip K. Dick
刊行:1968年
訳者:浅倉久志


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