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わたしたちが少女と呼ばれていた頃 [日本の作家 石持浅海]


わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (碓氷優佳シリーズ)

わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (碓氷優佳シリーズ)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2013/05/16
  • メディア: 新書


<裏表紙あらすじ>
新学期、横浜にある女子高の特進クラスで上杉小春は碓氷優佳という美少女に出会う。おしゃべりな小春とクールな優佳はやがて親友に――。二学期の中間試験で、東海林奈美絵が成績を急上昇させた。どうやら、夏休み中にできた彼氏に理由があるらしい。だが校則では男女交際は停学処分だ。気をもむ小春をよそに平然とする優佳。奈美絵のひと夏の恋の結末を優佳は見切ったようで……(「夏休み」)。教室のどこかで、生まれ続ける秘密。少女と大人の間を揺れ動きながら成長していくきらめきに満ちた3年間を描く青春ミステリー。


新書です。2015年10月に読みました。
「扉は閉ざされたまま」 (祥伝社文庫)
「君の望む死に方」 (祥伝社文庫)
「彼女が追ってくる」 (祥伝社文庫)(ブログの感想へのリンクはこちら
に続く、シリーズ第4弾で、なんと碓氷優佳の高校時代を描いた連作集です。
進学高校を舞台に、碓氷優佳の友人上杉小春の視点で卒業までを描いていく流れになっていまして、ミステリ的には日常の謎、です。
受験を間近にした生徒が、学校近くで赤信号にひっかかると、その子は不合格だという言い伝えの謎を解く「赤信号」
付き合いだしたクラスメイトの成績が落ちない、また近く別れると予想する「夏休み」
冷静沈着、クールビューティとしてイメージが定着している女子がイメージに合わない飲酒をし、二日酔いになるという謎「彼女の朝」
百合とみなされている二人が秘めている謎を解き明かす「握られた手」
マンガ家を目指していた少女がクラスメートのアドバイスに従って志望校を引き上げ、受験勉強を始めたことの裏側は? 「夢に向かって」
怪我をしギブスをすることになったクラスメイトにカンニング疑惑? 「災い転じて」
優佳が惹かれた大学生が優佳を拒んだ理由から、高校時代を上杉小春が振り返る「優佳と、わたしの未来」
の7話を収録しています。

視点人物を碓氷優佳の友達にして、碓氷優佳の高校時代を描いていきます。
相変わらず、石持浅海らしい変な思考回路を持つ人物がわんさか出てきますが(それが友達ってのもなんだか...ではありますが、碓氷優佳にあっている!?)、日常の謎にしているだけあってか、いつもよりは控えめな感じです。
謎自体もミステリとしては小粒で、まあ、碓氷優佳を使っても高校時代だとこれくらいなのかなぁ、と不遜なことを思ったりしていたのですが。
ラストの「優佳と、わたしの未来」にやられてしまいました。ああ、石持浅海はこれがやりたかったんですね、なるほど。
考えてみれば、もっとミステリ色を濃くした作品を連ねても同じことができたとは思いましたが、「優佳と、わたしの未来」でなされる謎解きのトーンと一致させようとしたら、軽めの謎がふさわしいような気もします。
ああ、すべては碓氷優佳のためだけに作り上げられていたのです。
「優佳と、わたしの未来」の、しんとした佇まいが読みどころでしょうか。最終行「優佳。じゃあね」というせりふに込められた深い意味をじっくりと味わいたいですね。
碓氷優佳シリーズにとっては大きな意味を持つ作品かもしれません。

ネタバレとは言えませんが、伏字で引用しておきます。
違う。碓氷優佳は、そんな人間ではない。優佳は、頭は冷静で、心が冷たい人間なのだ。
言われなければ、自分が他人に何の関心も持っていないことにすら気づかない。イノセントに残酷な人間。それが碓氷優佳だ。
なんということだ。友人を見捨て、見捨てていることにすら気づかない人間を、わたしは三年間も親友だと思っていたのか。」(194ページ)
優佳は、いずれ気づくのだろうか。自分が、他人に対して何の関心も持っていないことに。冷静で、冷たい人間であることに。」(197ページ)

新書で読みましたが、すでに文庫化されています。
わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (祥伝社文庫)

わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (祥伝社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2016/03/11
  • メディア: 文庫

また次の第5作目が出ています。
「賛美せよ、と成功は言った」 (ノン・ノベル)


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