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テニスコートの殺人 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]

テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

テニスコートの殺人【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/07/20
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
雨上がりのテニスコート、中央付近で仰向けに倒れた絞殺死体。足跡は被害者のものと、殺された男の婚約者ブレンダが死体まで往復したものだけ。だが彼女は断じて殺していないという。では殺人者は、走り幅跳びの世界記録並みに跳躍したのだろうか? “奇跡の”殺人に挑むのは、名探偵フェル博士。驚天動地のトリックが炸裂する巨匠の逸品! 『テニスコートの謎』改題・新訳版。


カーの<足跡のない殺人>を取り扱った作品の新訳です。
現場に残された足跡からしてブレンダが疑われる状況なので、ブレンダとブレンダに思いを寄せるヒューの二人が偽装工作をします。
解説で大矢博子が指摘しているように、「捜査する側にとってはごく普通の<足跡のある殺人>になってしまった。せっかくの不可能犯罪が表面的には不可能犯罪ではなくなっているわけだ。捜査する側が真犯人に辿り着くにはまずヒューとブレンダの偽装作戦を見抜けねばならず、見抜いた先にはさらに不可解な謎が待っているという次第」となっています。
凝っています。
もちろんフェル博士のこと、そんなことはお見通し、といった感じなのはいいのですが、注目すべきはハドリー主席警視!
いつもと違いますよ。何度も<足跡のない殺人>の解明をやってのけるのです。
しかもですねぇ、最終的にはフェル博士に一蹴されてしまうのですが、かなりいい線いったトリックを思いつくんです、ハドリー主席警視が! フェル博士が解明した真相よりむしろいいように思えるくらいのトリックを。
今回はハドリー主席警視をほめてあげたい。
一方、真相で明かされるトリックは、<足跡のない殺人>を成立させると同時に、もう一つの効果を狙った面白いアイデアではあるのですが、うーん、どうでしょうか。かなり無理があるんですよね。
ハドリー主席警視に軍配を挙げては...いかんのでしょうね、やはり。

あとこの作品で注目しておきたいのは、動機です。
意外な動機でもなんでもないし、カーは堂々とさらしているのですが(あまりにあからさまなので伏線なんてもんじゃありません)、いろいろと組み合わせて目がそらされるというか、読者にはピンとこないというか、不思議な境地の仕上がりになっています。

<足跡のない殺人>と言えばカーター・ディクスン名義の「白い僧院の殺人」 (創元推理文庫)ですが、こちらも新訳出してくれないかな?


<蛇足>
274ページから、引っ越し後の片づけが進まないフェル博士の様子が描かれます。
いやあ、親近感湧くなぁ...



原題:The Problem of the Wire Cage
著者:John Dickson Carr
刊行:1939年
訳者:三角和代






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