夏をなくした少年たち [日本の作家 あ行]
<裏表紙側帯あらすじ>
僕たちの夏の大冒険は、
あまりにも哀しかった――。
拓海と啓、雪丸と国実は新潟の田舎町に住むお騒がせ4人組。小学校最後の夏、花火大会の夜に、僕たちは想像を絶するほどの後悔を知った――。それから20年余り。惨めな遺体が発見され、あの悲劇の夜に封印された謎に、決着をつける時がきた。
奥付が2017年1月の単行本です。
第3回新潮ミステリー大賞受賞作。
新潮ミステリー大賞というと、
第1回受賞作が「サナキの森」 (新潮文庫)(感想ページへのリンクはこちら)、
第2回受賞作が「レプリカたちの夜」(新潮社)(感想ページへのリンクはこちら)
と、ミステリ的には控えめに言っても今一つな作品が続いていたので、第3回はどうかなぁ、と余計なお世話ながら少し心配して読み出しました。
プロローグで死体が発見され、その死体は刑事の一人の知り合いのようで...
すると場面が切り替わって、第一部は少年時代(小学6年生)の回想となります。
そして第二部で現在に戻ってプロローグで発見された死の謎が解かれる。
ミステリーらしい結構を備えた作品ではありますが、正直ミステリとしては薄味でしたね。
プロローグはともかくとして、第一部はちょっと不自然なところもありますが、それでも回想は楽しく読めました。
しかしねぇ、第二部に入ると...
プロローグの書き方からすると、殺されたのは誰か、そして殺したのは誰か、この2つが焦点となるミステリーだ、と読者は思います。
ところがところが、この2つとも簡単にわかってしまいます。これで作者が隠しているつもりだとしたら読者のレベルをあまりにも低く見積もりすぎでしょう。
また過去の事件の動機もちょっとなぁ。これと似たような動機は、ずっとずっと昔に東野圭吾がもっともっと効果的に、納得できるように書いていましたが(ネタバレになるので署名はここにはかかず、amazon へのリンクをはるだけにしておきます)、その作品すら動機がだめだと当時言われちゃってしましたからねぇ... それに動機の原因も、ちょっとありえないんじゃないですか? 作者は男性のようですが計算違いだと思います。
最後に出てくる誘拐話も、正直蛇足ですね。ないほうがすっきりしたと思います。
ということで、この作品はミステリとしてではなく、第一部とそれから20年以上たった現在とを結ぶ元少年たちを味わう作品、ということになりそうです。
大人になってから振り返る少年時代、という彩りは、しっかりと味わえます。(少年の目から見た少年時代ではない点にはご留意ください)
この作者、ミステリからさっさと離れていくような気がします...
これだけミステリとして薄味な作品が続くと、新潮ミステリー大賞ってどうなるのかなぁと思っていたら、第4回は受賞作なしだったんですね。
<2020年2月追加>
2019年7月に文庫化されていたので、書影を。
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