SSブログ

日曜の午後はミステリ作家とお茶を [海外の作家 ら行]

日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)

日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)

  • 作者: ロバート・ロプレスティ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/05/11
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
「事件を解決するのは警察だ。ぼくは話をつくるだけ」そう宣言しているミステリ作家のシャンクス。しかし実際は、彼はいくつもの謎や事件に遭遇して、推理を披露し見事解決に導いているのだ。取材を受けているときに犯罪の発生を見抜いたり、逮捕された作家仲間のため真相を探ったり、犯人当てイベントで起きた『マルタの鷹』初版本盗難事件に挑んだり、講演を頼まれた大学で殺人事件に巻き込まれたり……。図書館司書の著者が贈る連作短編集!


「本書はいわゆる“持ち込み”(翻訳者が見つけた原書を出版社に紹介し、邦訳出版を持ち掛けること)が通って出版の決まった本です。
つねづね、重厚な長編のあいまに楽しめるような、あるいは疲れた日の寝るまえに読めるような、軽やかな読み物がもっとあってもいいのにと思っていました。
お楽しみいただけましたら幸いです。」
と帯に訳者あとがきからの引用が書かれています。
出版業界の裏側の一部を見た気分ですが、なるほどねー。

軽やかな読み物、というだけあって、
「シャンクス、昼食につきあう」
「シャンクスはバーにいる」
「シャンクス、ハリウッドに行く」
「シャンクス、強盗にあう」
「シャンクス、物色してまわる」
「シャンクス、殺される」
「シャンクスの手口」
「シャンクスの怪談」
「シャンクスの牝馬」
「シャンクスの記憶」
「シャンクス、スピーチをする」
「シャンクス、タクシーに乗る」
「シャンクスは電話を切らない」
「シャンクス、悪党になる」
のコンパクトな14編を収録した短編集です。

さらっと読める、さくさく読める、という狙い通りの仕上がりになっていますが、個人的な好みからいうとちょっと軽すぎるでしょうか...
日常の謎、というよりはもう一歩ミステリ寄り、というか犯罪を扱ったものが多いのですが、それでもミステリとしての興趣は強くない、という点がちょっと物足りません。
でも、小味なミステリとして(あるいはミステリ風味の短編として)気軽に楽しめるいい作品だと思いました。
各話ごとに「著者よりひとこと」として作者のコメントが出ているのも、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」 (創元推理文庫)シリーズみたいで楽しいですね。

主人公シャンクスは、レオポルド・ロングシャンクスという名前のミステリ作家で、長い経歴なんだけど、さほど売れていない。
妻のコーラは、最初はロマンス作家の卵(ひよこくらい?)でしたが、本書が進むにつれてシャンクスより売れているみたいです。
このほのぼの感ただよう夫婦を主人公に据えているのがポイントなので、解説で大矢博子が書いているように
「つまるところ、本書は切れ味やサスペンスやサプライズより、それらをくるんだ上で続いていく日常というものの愛おしさを大切にしていると言えるだろう」
ということかもしれません。

日本語版タイトルは「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」となっていますが、お茶会(?) で事件の話題が出されるわけでも、シャンクスがお茶を飲みながら謎解きをするというわけでもありません。全体の雰囲気をイメージして日本でつけたものと思われますが、読むときには、それこそお茶でも飲みながらリラックスして読むのがよいと思われます。


<蛇足>
最後の「シャンクス、悪党になる」にさび猫の話題が出てくるのですが、さび猫、知りませんでした。


原題:Shanks on Crime
著者:ROBERT LOPRESTI
刊行:2014年
訳者:高山真由美
なお、この「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」 (創元推理文庫)は、短編集”Shanks on Crime”に、日本版独自に「シャンクス、悪党になる」を加えたものとなっていまして、奥付でも発表年は2003-2014という記載になっています。
以上では、”Shanks on Crime”のものを記載しています。


nice!(16)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 16

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。