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殺竜事件 a case of dragonslayer [日本の作家 か行]


殺竜事件 a case of dragonslayer (講談社タイガ)

殺竜事件 a case of dragonslayer (講談社タイガ)

  • 作者: 上遠野 浩平
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/04/20
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
竜──人間の能力を凌駕し、絶大なる魔力を持った無敵の存在。その力を頼りに戦乱の講和を目論む戦地調停士・ED(エド)、風の騎士、そして女軍人。3人が洞窟で見たのは完全な閉鎖状況で刺殺された竜の姿だった。不死身であるはずの竜を誰が? 犯人捜しに名乗りをあげたEDに与えられた時間は1ヵ月。刻限を過ぎれば、生命は瞬く間に消え失せる。死の呪いをかけられた彼は仲間とともに謎解きの旅へ!


カバー袖の作者紹介にもありますが、上遠野浩平といえば、ライトノベルブームの礎を築いた作家ですね。
「ブギーポップは笑わない」 (電撃文庫)で始まった、メディアミックスの快進撃に目を見張った記憶があります。
ジャンル違いだとはわかっていても、気になって手に取りました。
正直乗り切れず、面白さを体得できず、消化不良に終わってしまい、その後手を出さなかったのですが、上遠野浩平はミステリ的手法も駆使される作家、という認識でしたし、さすがにライトノベルというジャンルにもある程度なじんできていますので、この「殺竜事件 a case of dragonslayer」 (講談社タイガ)から始まるシリーズが講談社ノベルスから出た際、とても気になっていました。
2018年4月から、講談社タイガで文庫化が始まったので、あらためて上遠野浩平を読んでみようと、手に取った次第です。

結論から言うと、面白かったですね。
竜が存在するファンタジーな世界を舞台にした冒険譚ですが、無敵な竜をいったいどうやって殺したか? 誰が殺したか? という謎を中心とした物語でもあります。

「事態が異常で不可解としか見えないからこそ、それを解決する道は論理的かつ実際的でなければならない。この世で起きていることなんだ。同じ世界で生きている我々と同じような立場に犯人も立っている。そいつもやっぱり、我々と同じ論理に従って生きているはずなんだ。それを忘れて安易な不条理に逃げては見えるものも見えなくなる」(224ページ)
途中、探偵役?のEDが言うのですが、このセリフ、いいではないですか。

殺された竜のところを訪れた人間を探して話を聞いて回る、という、ファンタジー版「舞踏会の手帖」とでもいった展開となります。
もともと、勇者がいて、怪物(この物語では竜)がいて、各地で冒険を繰り広げる、といったタイプのファンタジーは苦手なのですが、このミステリ的興味で最後まで引っ張ってもらえました。

そして注目の謎解き。
これ、平凡と言えば平凡な謎解きなんですよね。
でも、この特殊世界の設定、人物設定(人物には竜も含みます)にぴったり寄り添った謎解きで、個人的には〇です。

シリーズも続けて読んでいきたいですし、「ブギーポップは笑わない」も実家から発掘して読み返してみようかな、と思います。

<蛇足>
「功名心でも好奇心でも憧憬でもない。」(316ページ)
憧憬に「どうけい」とルビが振られています。
慣用読みとして認められている読み方で、辞書にも載っているようですが、この語は「しょうけい」と読んでほしいな、と思いました。




タグ:上遠野浩平
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