二人のウィリング [海外の作家 ヘレン・マクロイ]
<カバー裏あらすじ>
ある夜、自宅近くのたばこ屋でウィリングが見かけた男は、「私はベイジル・ウィリング博士だ」と名乗ると、タクシーで走り去った。驚いたウィリングは男の後を追ってパーティー開催中の家に乗り込むが、その目の前で殺人事件が……。被害者は死に際に「鳴く鳥がいなかった」という謎の言葉を残していた。発端の意外性と謎解きの興味、サスペンス横溢の本格ミステリ。
ヘレン・マクロイは、探偵役であるウィリング博士にいろいろな登場の仕方をさせてきていますが、今回のこの「二人のウィリング」 (ちくま文庫)では、偽者を登場させました(笑)。
偽者をウィリングが見かけてからの展開がすごくなめらかで、パーティに潜り込むところとか、おいおいと思いつつも、楽しめてしまいます。
つけていっていると、偽者が「鳴くーー鳥がーーいなかった」というセリフを遺して死んでしまう。
そのあともスピーディに展開します。
パーティの出席者が殺される事件が起こり......
パーティの出席者がふたたび一堂に会す段取りもおもしろかったです。
今回作者が用意した真相はさほど目新しいものではないのですが、当時としてはすごかったかもしれません。
今、この真相を描くと、もっともっと面倒くさい作品になりそうですが、あっさり片付けているところが魅力だと思います。
発想のもとは作中にもある通り、ディケンズの「リリパー夫人の遺産」なんでしょうか(色を変えておきます)? 未読なのでわかりませんが。
短めの作品ですが、サスペンスあり、謎解きあり、意外な真相あり、とても楽しめる逸品だと思います。
原題:Alias Basil Willing
作者:Helen McCloy
刊行:1951年
翻訳:渕上痩平
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