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死香探偵 連なる死たちは狂おしく香る [日本の作家 喜多喜久]

死香探偵-連なる死たちは狂おしく香る (中公文庫)

死香探偵-連なる死たちは狂おしく香る (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
人気作家のサイン本に一冊だけ付いた甘いチョコレートの死香。慰安旅行先の旅館で遭遇したセロリの香りと消えた死体。死香を「食べ物」の匂いに変換する潤平と、分析学のエキスパート・風間は不審な事件を次々と〈嗅ぎ解く〉が、バナナの甘い香り漂う殺人現場で風間に異変が。容疑者の謎の美女に過剰反応し、初めて潤平を現場から遠ざけて?


「死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る」 (中公文庫)(感想ページはこちら)につづくシリーズ第2弾。
5月に読んだ最初の本であり、本帰国後日本で最初に買った本でもあります(どうでもいいことですが)。

シリーズは
「死香探偵-哀しき死たちは儚く香る」 (中公文庫)
「死香探偵-生死の狭間で愛は香る」 (中公文庫)
と順調に巻を重ねているようです。
しかし、喜多喜久、すごいですね。シリーズ作品をいくつも抱えていて。

このシリーズの主人公は特異体質の持ち主、桜庭潤平。
死臭を別の匂い、しかも食べ物の匂いとして感じてしまう。そしてその食べ物が(匂いが気になって)食べられなくなってしまう、という難儀な体質の持ち主です。

「歪んだ愛が招く死は、ほろ苦い香り」
「湯煙に霞む死は、青葉の香り」
「艶やかな香り、自由の彼方の死より来たる」
「安らかな死は、蠱惑的な香り」
の4話収録です。 

今回の『死香』は、オレンジ、チョコレート、セロリ、バナナ、パン。
もう、このあたりで潤平が食べられるもの、なくなってきちゃっているのでは?
前作「死香探偵 - 尊き死たちは気高く香る」で、ごはんを食べられなくなってるし、今度はパン! 主食級の食べ物が次々アウトになってますよ。
風間准教授、急いで研究してあげてくださいよ。

死香の性質もかなり?明らかにはなってきてますね。ただ、こちらは研究の成果というよりは、潤平も体験の積み重ね。
・亡くなってからの時間が短ければ短いほど鮮烈になる
・犯人の肌や髪に染み付いた死香は、着替えたりシャワーを浴びたりしたくらいでは消えない
「部屋付近の地面に残されたオレンジの死香はさほど強くはない。そのことから、今回の死は自殺ではないかと僕は推察した。殺人者がここを通っていれば、もっと鮮烈に香るはずだからだ。」(28ページ)
なんて分析を潤平がしていますが、こういうことだと捜査にしっかり役立ちますね。

「歪んだ愛が招く死は、ほろ苦い香り」は死香の移り香が小道具として活躍します。
しかしなぁ。チョコレートが食べられなくなった潤平に、死香ではなく、ちゃんとチョコレートの香りがするチョコレートを作って渡すっていうのはなぁ、しかも、バレンタインデーに。風間准教授、変ですよ、あなた。
しかも、そのチョコレート、潤平にとってチョコレートの香りがするってことは、死香の成分を加えているわけで、そんなの食べていいのかな?

「湯煙に霞む死は、青葉の香り」は、死香を頼りに死体を探すという、死香の使い方としてはまずおもいつきそうなことをします。今までこのシリーズで出てこなかったのが不思議なくらい。
風間の研究室のメンバーに、二人の仲を疑われる始末ですが、そりゃあ、傍から見たら、十分怪しいよ、潤平と風間は。

「艶やかな香り、自由の彼方の死より来たる」は、ミステリとしては由緒正しい、ただ、今時これやるかね?と言いたくなるようなトリックが使われているのですが、死香と組み合わせるとなかなか趣があるかも、です。
まあ、それよりもなによりも、潤平が、風間との仲を疑ってしまう、座馬倫花という女性ですよね。
正体、事前に見当ついたんですけど、潤平が座馬の存在を意識してもやもやするところがポイントなんでしょうね。

「安らかな死は、蠱惑的な香り」は連続自殺事件を扱っていますが、潤平以外に、死香を感じとれる人物がいる、というのが衝撃的でした。
死香をもって追い詰めるという王道的展開です。

「死香」をめぐっていろいろとバリエーションを作り出している点がおもしろいな、と思う一方で、風間と潤平の仲にBL的要素はあまり入れてほしくないなー、と思ったり。
さておき、シリーズの今後、どういう手を見せてくれるのか、期待します!


<蛇足1>
「その気づきに、心の中がほっこりと温かくなる。」(148ページ)
心が温かくなった潤平とは逆に、「気づき」という単語に接してげんなりしてしまいました。
178ページにも出てくるんですよね。
狭量なのでしょうが、いやな表現だな、と思わずにはいられません。

<蛇足2>
「主人公の男は、本当に無罪なのか。それを見極めたいと思っているのだが、見るたびに印象が変わる」(148ページ)
映画「ショーシャンクの空に」についての、風間のセリフです。
そうか、そういう観方もありますね。
今度観る機会があったら、気をつけるようにしよう。








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