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停まった足音 [海外の作家 は行]


停まった足音 (論創海外ミステリ)

停まった足音 (論創海外ミステリ)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2006/07/01
  • メディア: 単行本

<袖あらすじ>
屋敷の一室で女主人の遺体が発見された。心臓を貫いた弾丸、傍らには被害者の指紋がついたリボルバー。争った形跡はなし。事故か自殺か、あるいは殺人か。死亡直前に被害者の背後で足を止めたのは誰なのか。ロンドン警視庁のポインターが地道で緻密な捜査を続けた結果、浮かび上がる意外な真相……。ヴァン・ダインが称賛したことで知られ、戦前より幾度となく邦訳刊行が予告されてきた『停まった足音』が、ついに日の目をみる!


単行本です。
論創海外ミステリ52
A・フィールディングの「停まった足音」 (論創海外ミステリ)
幻の名作がついに邦訳された、というので、なかなかロマンを感じますね。
なかなか訳されないというのは、作品の質にそれなりの理由があるのでは、という疑念を持つところですが、読んでみると、そんな心配は無用、しっかりとした本格ミステリでした。

冒頭、ロンドン警視庁のポインター警部と所轄署長との会話に新聞記者が混じっていてびっくりしますが、時代を感じさせて微笑ましい感じがしました。

事件は自殺か、事故か、はてまた殺人かという流れなのですが、単純そうに見えて、いやむしろ単純であるだけに、事件の様相が少しずつ変わっていくのがとても面白かったですね。

際立ったトリックがあるわけではないのですが、人間関係を軸にプロットが組まれていて、ベールをはぐように少しずつ明らかになっていく事実により、人間関係が違って見えてくるという、ある意味現代的なミステリに仕上がっているように思えました。
読後、被害者の来し方、人生が気になって仕方ありませんでした。


<蛇足1>
管轄警察署であるトウィッケナム警察署。
Twichenham のことだと思いますが、日本語の表記が難しい場所ですね。
トウィッケナムのほかに、トゥイッケナム という書き方をしているものもあるようです。

<蛇足2>
「そしてライチョウの冷製とモーゼルワインを?」(18ページ)
ライチョウを食べるのですね。
調べてみると、いわゆるジビエシーズンにはよく出回るようです。
ロンドンにいた間、お目にかかったことはなかったような。
もっとも、ライチョウは英語で Grouse ということを認識していなかったので気づかなかっただけかもしれません。

<蛇足3>
「奥には川の方に向かって増築された小さな張り出しがあり、小ぢんまりと居心地のよさそうな凹部屋になっていた。」(26ページ)
なんとなくわかったような気になって読み進みましたが「凹部屋」がわかりませんでした。

<蛇足4>
「全額を引き取ったというのです。支払いは銀行券でした。その銀行券の半分がなくなっているのです」(83ページ)
決して間違いではないのですが、日常会話では銀行券と言わず、紙幣と言うけどなぁ、と思いつつ読んでいると、
「疑問をもたれることなく、番号を照会されることもなしに銀行券を売却できたのは彼だけだ。」(110ページ)
となって、考えてしまいました。銀行券を売却? 最後までわかりませんでした。

<蛇足5>
「そこですよ」つま先がこれ以上語りかけてこないことに、ポインターはようやく納得したようだった。(188ページ)
つま先が語りかけてくる?? どういうことでしょう??

<蛇足6>
「あなたが私たちに事実を話さなかった理由も、やはり知りませんか?」(243ページ)
自分のことなのだから日本語で「知る」という動詞を使うのは不適切でしょう。



原題:The Footsteps That Stopped
作者:A Fielding
刊行:1926年
訳者:岩佐薫子




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